人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記134

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・4月3日(土)晴れ
(前回から続く)
「この病院はアメニティ一切なしだから洗濯も自前で洗剤を持参してランドリーコーナーのコインランドリーで洗い、日中は屋上へ出入り自由になっているから天日干しにもできるし、一部の女性は乾燥機しか使わなかったりする。以前入院した病院は徹底してアメニティだったり、逆に洗濯機も無料で使用自由だったりして病院次第としか言いようがないが、当然Kくんも入院案内を読んで衣料用洗剤は持参していた。なのに彼に洗剤を貸すことになったのは、持ち運びの便利さで濃縮液状タイプの洗剤を持ってきていたからだ」

「なにしろ娘二人を育て上げてきたので、濃縮液状洗剤は浸透力が強くすすぎもさっぱりして柔らかく仕上がるし、コストの面でも探せば粉末洗剤より安く買えるから愛用している。彼が持ってきていたのは粉末洗剤で、今ランドリー二台とも空いているから洗濯しようぜ、とそんなことまで彼は誘いに来るのだが、アルコール科の患者は液状のものは使用時以外ナースステーションに預けなければならない。入院した時に持ち物をチェックされ、シャンプーまでは取り上げられなかったが液状洗剤は使う時だけ出しますから、と徴収されてしまった。どうしてですか?飲んでしまう人がいるんです。だってこれ、洗剤ですよ?それでも飲んでしまう人がいるんです。まあ持ってきた衣類の数だと週に一回洗濯すれば間に合うし、アル中病棟に入院するのはそういうことなら素直に従うしかない」

「そういうわけでKくんには濃縮液状洗濯洗剤を使っているのは知られていて、苦笑しながらナースステーションから出してもらいに行きその利点を話したことがあるのだが、頼む佐伯くん、今回だけでいいから洗剤貸してくれないか。いいけどどうしたの、自分のを切らしちゃったのかい?いや、まだ残ってるけど…SmちゃんだけじゃなくSmちゃんの奥さんとも会うだろ?会うのはSmくんの帰り日だろ?うん、だから今日洗濯して寝押ししておきたいんだ、おれのは粉の洗剤だから万が一洗剤のすすぎが悪かったら恥かしい。はあ?Smくんにとってはともかくとして、KくんにとってSmくんは年少の親友という意識だろう。われわれより三歳下になるはずだ。Smくんの奥さんは10歳年下というなら30歳そこそこか。それにしてもわざわざ洗剤に気を使いズボンに寝押しまですることはあるまい」
(続く)