人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記185

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(人名はすべて仮名です)
・4月14日(水)晴れのち曇り
(前回から続く)
「午後は眠いが、今日は灰皿掃除当番なので少しだけ横になり灰皿掃除に取りかかる。梅崎さんが手伝ってくれる。滝口さんがこないだ梅崎さんもいる前で笑って話してくれるには、第三病棟から移って同じテーブルになった時、梅崎さんは退院していった二枚目の男性患者と比較してげー、と滝口さんに洩らしていたそうだ。いやはや。でも今は灰皿掃除を手伝いあうくらいに親しくなった」

「午後の清掃まではもう少し横になれるかなと思いきや、いつもよりだいぶ早目にラジオ体操と掃除が始まってしまう。これも当番制でCDをかけるから今日担当した人がせっかちなのだろう。やむを得ない。それでも掃除をしているふりだけしてなまける方法も身につけたので、いつもではないが今日は手抜きをさせてもらう」

「一服程度のひと休みができたかどうかのうちに、午後の学習プログラム、薬剤教室が始まる。今日の題目は『眠りと睡眠剤』。これは提出するノートも授業内容をそのまま書きとめればいいので、VTR観賞みたいに看護婦にそのまんまじゃない、となじられるいわれもない。自分なりの感想なんて書きようがない。ちゃんと聞いてノート取っていました、というだけだ」

「夕食後、なんとなく滝口さんに訊かれてこれまでの入院や入院前の状況を話していたら、どうも入院前や入院中にはやたらと望みもしないのにモテていたのが可笑しな話で、なぜ周期的にウンコにハエがたかるようにモテてきたか、という一向にありがたくない自虐話になった。この入院でもいきなり羽田有紗みたいな変な女にしばらく絡まれていたのを滝口さんも見ていたので、説得力はある」

「トイレに立って戻ると、話の区切りもついていたこともあり、勝浦くんと滝口さんが薬物大量服用やリストカットの体験談、様々な手段で何回もしてきたらしく、自傷行為は経験も興味もないので聞き手にまわった。話題にすることも痕跡を見せるのも自傷行為の延長なのかもしれないな、と思っただけだ。普段、滝口さんは服薬後すぐに寝に戻るが、今日は長話をしたい気分だったらしく10時までデイルームにいた。三人目から後の女難は明日聞かせてくださいね、と彼女が去り、自分も戻ろうとすると勝浦くんが訊いてきた。佐伯くんは最近の清水ちゃんをどう思う?」(続く)