人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記190

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(人名はすべて仮名です)
・4月17日(土)深夜雪~曇りのち晴れ
「斎藤さんは転院になる予定が完全な骨折までには至らず、近隣の総合病院で検査を受けてきてこちらの病院でアルコール科入院を続けることになった。当然脳震盪なども調べられただろう。だが包帯で腕を吊っているくらいだから第二病棟に下りてきてから三日目で介護病棟の第三に戻ることになった。斎藤さんも気の毒だが、尾崎さんも気の毒だ。これが坂部だったら、あーあ、仕方がねえなあと受けそこねてケガした本人の自業自得とあざけりそうだが、尾崎さんの場合は絵に描いたような、ガーン、という顔をしていた」

「代わりというのではないだろうが、お照さんが退院して空きができた四床部屋に加藤さんという小柄な女性が入ってきた。土曜日は本来プログラムなしで家族持ちや社会人(?)は日曜にかけて帰宅外泊するくつろぎの週末だが、第三土曜日の晩は『院内例会』と称する断酒会からの出向講義があるのでアルコール科患者は帰宅外泊できない。日曜に日帰り帰宅だけしかできない。いつもの週末は病棟の居残り患者にとっても人数が減って閑散とした病棟で気楽にくつろげるから、土曜の晩の講演会など歓迎する患者は当然いない。病院と断酒会、どちらからの申し出なのやら、任意参加なら誰も出ないだろう」

「今日はまる一日寝ていたようなものだ。昼食後も眠りこんで、ぼんやり集合の合図の音楽、ラジオ体操、掃除中の物音…でも誰からも起されないならこのままでいいや、狸寝入りではなく金縛りにあったように眠り続けて、起きられない。午後三時すぎにばつの悪い思いで起きる。晩は慌ただしくなるからさっさと入浴しておかなければ」

「日記が一昨々日で止っている。夕食前後で坂部に三度も絡まれる。相手にするのも馬鹿馬鹿しいので適当に受け流す、するとしばらくしてまた絡んでくる、という調子。勝浦くんはゴールデンウィーク明けの退院を期待していたら20日前後までは入院静養するように主治医に言われ、退院しても一年以内に再入院かもしれない、と自分から言い出している。実は勝浦くんの容態は、清水くん同様に松本さんと按じていたところだった。あいつら退院しても長くはもたねえぞ、退院したらまた病気を悪くするだろうしな。そうですね。治すためには生活そのものを変えるしかないのだ」