人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記226

イメージ 1

(人名はすべて仮名です)
・5月13日(木)晴れ
(前回より続く)
「昼食前の空き時間に、尾崎さんから今、外来ロビーに冬村さんが来て勝浦さんと話してるよ、と教えられて、入院中の挨拶くらいはいいかとロビーに降りると冬村さん(外来通院)を囲んで勝浦くん、三田さん、坂部が雑談していた。もちろんアルコール科患者のあいさつは、どう?スリップした?になる。冬村さんはしばらく前までの病棟仲間に囲まれて嬉しそうだった。この人にはずいぶん世話になったんだよなあ、と改めて感じる。冬村さんは入院前一か月も断酒していたそうだから、このまま大丈夫という自信はある、と言っていた(注)」
(注)退院後一か月で冬村さんはスリップし、べろべろに酔って電話してきた。断酒なんかしてられっかよおバッキャロー(哄笑)と、人が違ったようだった。その後シラフで電話があり、本人は酔って電話したことをまったく憶えていないという。その上、他の人から冬村さんが酔ってレイプ事件まで起したことまで聞いて愕然とした。本当にアルコール依存症で深刻な問題を抱えていたのだ。

「昼食後ベッドに横になると、疲れで眠り込んでしまう。退院予定日が決まったらそれまでの疲労が一気に襲ってきたようだ。掃除の合図の音楽が流れても体が動かない。うめき声をあげていたらしく、勝浦くんからいいから寝てろよ、と言われる。すまん、となんとかモップがけしている勝浦くんにお礼だけ言って、次に勝浦くんに起された時にはもう午後三時をまわっていた。午後のプログラムのグループワークもさぼってしまったことになる。たぶん誰かが呼びに来て、勝浦くんが体調悪くて寝ているから、とでも答えておいてくれたのだろう。勝浦くんにも世話をかけた」

「大丈夫か、どうしたんだ?疲れてるみたいだ、もう大丈夫、ありがとう。三時半を待って一番風呂に入りに行き、湯上がりの点呼前四時ぎりぎりメールチェックする。四時を過ぎると携帯電話を戻さなければならないのだ。昼過ぎには新着はなかったが、滝口さんから昨晩と今日の夕方の二通が来ていた。一通目はいよいよ退院決りますね、と楽しげで、二通目は混乱している。一通目に返信がないので心配になり混乱してしまったのだ。返信してあげたいが時間がない。申し訳なく思いながらナースステーションに戻してくる」
(続く)