人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記229

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(人名はすべて仮名です)
・5月14日(金)晴れ
(前回より続く)
「女医の先生の酒害教室の授業は落ち着いた、わかりやすい内容だった。担当医ではないから一度も話したことはないが、冬村さんと滝口さんはこの人が主治医だと話していた憶えがある(注)。勝浦くんがいいなー女医さんが主治医で、でもおれの主治医は院長だからな、と妙なところで自慢気だったのと記憶がセットになっている。今は院長どころか会長だが、勝浦くんには院長なら現役トップだが会長だと隠居の片手間のイメージで、不服があるもののあと数日で退院なので、まあいいか、と思っているようだ」
(注)退院後にこの女医は、授業の生徒(患者)以外の面識などまったくないにもかかわらず外来診察を受ける滝口さん・冬村さんに佐伯というのは患者としても人間としても最低、退院後は縁を切って正解、立派な人間ならあんな最低の男とは一切関わりあわない方がいい、と一方的に力説していたという。この女医が何を根拠に第三者の退院患者を誹謗中傷するのか、少なくとも「立派な人間」のする(しかも職業上で)行為ではあるまい。精神科医としての適性すら疑われる。

「授業終了がちょうど三時半で、男湯いいですか、とヘルパーさんに声をかけ部屋に入浴用品を取りに戻ると、勝浦くん不在。大方外来ロビーに電話をかけにでも行っているのだろう。滝口さんからのメールにも、毎日電話がかかってきますとあった。それも要領を得ず不完全であいまいな話ばかりだそうで、昨日の滝口さんからのメールが大混乱だったのもそのせいかもしれない。部屋にもデイルームにもいないなら、なんで声かけてくれないんだよ水くさいぞ、とスネられるいわれもないだろう。さっさと一番風呂に入りに行く。この頃は小林くん、森下さん、島田さんが一番風呂グループになっている」

「点呼のかかる四時までに上がり、携帯電話をナースステーションに戻す。勝浦くんも点呼までには戻ってくる。長電話になっちゃったよ、シミ(清水)ちゃんとさ、死ぬほどつらい、病棟に戻りたいってさ。通い婚だったよね、アパートは引き払ったの?アパートはそのままだが、奥さんの実家からハローワークに通ってるって。奥さんは?大変らしい。なら清水くんが24時間看護しているようなものか、息が詰まるな、土日でも会ってあげたら?口実があれば外出しやすいだろ」
(続く)