人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記246

イメージ 1

(人物名はすべて仮名です)
・5月18日(火)晴れ(明後日退院)
(前回より続く)
「体育の授業は散歩などでもそうだが、病棟内とは環境が変ると人それぞれにいろいろな面が見られて面白い。坂部や金子など病棟では自分勝手にふるまっているが、ビーチバレーのように集団スポーツをやると自然に屈託なく意外な協調性を見せている。各自の個人的事情による入院患者の寄せ集め集団ではあるが、遊びを介してなごやかにうちとけて楽しむのは良いことだ。ただしここでも池田くんはわが道を行く。準備体操中に寝そべってごろごろしていたり、片手にタオルを持ったままバドミントンをしたり―バスタオルにしろハンドタオルにしろフェイスタオルにしろ、彼は片時も離さずなにかしらタオルを持っている」

「帰りは体育館出入口で解散になったので、病棟には戻らず、中庭喫煙所で一服して外来待合室ロビーに直行、持ってきていた携帯電話で滝口さんへの返信を打ち始める。点呼があって携帯電話を預けなければならない四時までにメールを仕上げなければならない。本当は部屋でのんびり打ちたいが昼食後の一件の後だから入院中、もう部屋では携帯をいじれない。吉村くんはまだろくに書き出しもしないうちからカーテンを引いて覗いてきたので、まとまりかけていた文案も彼とのやりとりで雲散霧消してしまった。勝浦くんが羽田をよく一喝していたが、あれをやりかねなかった。怒りをこらえるのは怒りを爆発させるのよりも消耗するものだ。その上こんこんとにこやかにパラノイアを説得するとあれば」

「メールになるべく簡略かつ要点を押さえて書いたのは、中里さんから勝浦くんについては昨日退院した後いろいろ聞いた、よほど気を悪くしていたそうだから自分は誰とも会う気はないからともかく、滝口さんが邪推されて迷惑かかるようなら退院日に送ってもらうのは断りたい、滝口さんは今後も同期入院グループとのつきあいがあるのだし、一切誘いを受けないつもりでも自分の知らないところであることないこと言われるのはこちらも嫌だから、と書いているうちにうんざりしてくる。なんでまったくどいつもこいつも、まともに常識的に感じ考え、まともにふるまう人間はいないのか?いない、精神病院だから。医療スタッフすら首尾一貫せず、最終的には頼りにできないのだ。でもそれも明後日の朝までだ」
(続く)