人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アニメ『花物語』一挙放映ネタバレ編3

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ここからは本当にネタバレ全開になります。お読みの方はその辺ご承知下さい。前回までで第三話の前半、つまり全五話二時間の前半一時間の展開です。ここまででクライマックスが二度ありました。ヒロイン神原駿河がかつての好敵手・沼地蝋花から聞き出す、選手生命断念後の陰惨極まる告白とその直後の蝋花の唐突な抱擁。前回のあらすじでは軽く流しましたが、沼地蝋花は慇懃無礼な動作も告白も実に陰湿で、嫌悪感をそそる中性的な敵役に描かれています。舌舐めずりをするように語られる彼女の告白は視聴者にとっても不愉快なキャラクター造形であり、ヒロインがその反感を代行する役回りです。

蝋花の告白自体は誇張されてはいますが、不幸に陥った人間が他人の不幸に愉楽を抱く心理にはリアリティがあり、愉しみのために悩み相談をやっているが実害は及ぼしていない、相談者のほとんどが相談自体を目的として肩の荷をおろしていくし切実な相談者には適切な機関に案内する、と、言い分は冷静で合理的なので、駿河は反論する根拠がありません。そして蝋花は駿河の悩みを見抜き、突然抱擁して胸を揉みます。
そしてもう二度と会うことはないだろう、と別れた翌朝には、駿河の左腕は元に戻っていたわけです。

蝋花の転居先調査を依頼していた少女から、彼女は選手生命断念直後に自殺している、とすかさず電話で知らされるのが第二のクライマックスです。駿河はなぜ霊感詐欺師が彼女の蝋花との面会を予測して駅で待ち伏せしていたかを疑っていましたが、腕の呪いを欲しがる者が現れる、というのは蝋花の存在を知っていたからこその忠告で、待ち伏せも蝋花との面会の約束を本人から聞いたのだ、と理解します。つまり生霊である蝋花は愉楽どころではなく、他人の呪いを取り込むことで肉体を回復する。駿河の左腕の呪いは蝋花が奪い取ったのです。それがあの唐突な抱擁でした。

過去の亡霊のようなライバルが本当の亡霊だった(笑)という急激なホラー展開のあと、後半はなんと亡霊とのバスケ対決(笑)という青春スポーツアニメになります。第一戦はワン・オン・ワンで、駿河の左腕以外にも身体のあちこちにこれまで他人の呪いを取り込んできた蝋花に、駿河はまるで歯が立ちません。数日後、駿河は取って置きの切り札を賭けて最後の勝負に挑みます。それはやはり母の遺品の、大猿の頭部のミイラでした。(続く)