人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アニメ『花物語』一挙放映ネタバレ編6

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短くも激しい勝負に決着がつき、ライバルだった二人は体育館の床に横たわり、笑いながら互いのプレイに突っ込みあいます。打ち解けて虚勢を解いた蝋花はそれまで駿河に見せていた姿とは別人のようでした。
前回に駿河を打ちのめした時は蝋花は駿河を壁に追い詰めてキスを迫り、なぜ逃げない?負けたと認めたくないから?と一瞬頬ずりして高笑いしたものでした。今は蝋花はむしろ安堵感からか、あどけなくすら駿河には見えました。

よく見れば、と駿河は思います。可愛い女の子じゃないか、キスくらいしてもよかったな。
そして駿河が声をかけようと向き直ると、沼地蝋花の姿は消えており、彼女が横たわっていたかたちに腕や脚、肩や肘や膝、肺やいくつかの臓器のミイラが床の上に残っていました。駿河は亡き母の、毒にも薬にもなれない水という言葉を思い出し、蝋花は泥水だったんだと理解します。だから駿河の呪いを奪って挑戦を受け、真剣勝負によって浄化されるのを願った。駿河が呪縛されているのは呪いではなく亡くした母の記憶とも見抜いていた。ここで視聴者も、『花物語』の花とは蝋花を指していたと気づきます。

この後はエピローグで、駿河阿良々木暦に会って事後報告し、それは大変だったなあ、と労られながら今回の事件は彼女にとってどんな意味があったか、自分らしからぬ行動をしていたのではないか、という応答になります。
自分の思う自分と他人から見た自分はどちらも自分だろ、と先輩はいなし、もし人に訊かれたらこう答えればいい、この夏お前は正しいことも間違ったこともしていない、青春していたんだ、ってね―という阿良々木暦の台詞で『花物語』全五話は終ります。

このエピローグはやや蛇足で、「物語」シリーズの統一感のために阿良々木暦を再登場させた観があり、ストーリー上では蝋花に敗北した駿河が再戦を決意するきっかけに一度再会すれば十分でした。『花物語』のテーマは神原駿河と最後に真剣勝負してから成仏したかった蝋花と、沼地蝋花との対決で亡き母の呪縛から解放される駿河の、女子高生同士のスポーツを介した友情のプロセスで、臭くなりかねない設定を見事にスリリングなアニメーション作品にしています。このネタバレ記事をお読みでも、興はそがれないとお薦めします。なお9月/10月発売予定のディスク版は、テレビ放映版のOPとEDが逆になるそうです。