Il Rovescio Della Medaglia-"La Bibbia" Italy,1971
https://www.youtube.com/watch?v=-qD7SHiHMp0&feature=youtube_gdata_player
(A)1.Il Nulla/2.La Creazione/3.L'Ammonimento
(B)1.Sodom e Gomorra/2.Il Giudizio/3.Il Diluvio
Pino Ballarini-Voce
Enzo Vita-Chitarra Elettrica
Stephano Urso-Basso Elettrico
Zino Campoli-Batteria
せっかくのイタリアン・ロックなので担当パートをイタリア語表記にしてみた。ギター、ベース、ドラムスはこれが標準として、ヴォーカルはVoceの他にCantoと表記されることもある。また、リード・ヴォーカルと強調する場合はVoce Solistaになる。キーボード類の場合オルガンはOrganoでピアノはPianoforte、シンセサイザーはそのままSynthesizer。ギターとベースでElettrica、Elettricoと形容詞が異なるのはChitarraが女性名詞、Bassoが男性名詞になるからで、ではBatteriaは女性名詞なのかと考えるときりがない。伊独仏の三国はユーロ圏ロックの大国だからこの三か国の楽器名はアルバム購入の際にバンドの楽器編成を知る目安になる。ただし管弦楽器は歴史の浅いサックス以外はかなりややこしく、しかもこの三国の古典音楽伝統は古いから管弦楽器入り編成のロックバンドもけっこう多かったりする。
と余談から入ったが、このアルバムがデビュー作のロヴェッショ・デッラ・メダーリャ(「メダルの裏側」の意)は71年~73年に三枚のアルバムを残したバンドで、ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムスの編成からも予想されるようにヘヴィなハード・ロック。このファーストはスタジオ・ライヴで二時間で制作されたそうで、次のセカンドも同じようなものだろう。冒頭の"Il Nulla"(邦題『無』)五分間は我慢してください。二曲目の"La Creazione"(邦題『創造』)からがアルバム本編の始まりで、これはブラック・サバス(70年2月13日デビュー作発表)直系ではあるが、日本の誇るフラワー・トラヴェリン・バンド(70年10月デビュー作発表)、特にセカンド・アルバム『SATORI』(71年4月発表)の"SATORI Part.1"にそっくりではないか。サバスから発想して独自のエスニック・ヘヴィ・ロックを打ち出したら日本とイタリアで似たような音楽になった。もちろんフラワーとメダーリャではバンドの力量の差は歴然で、フラワーはテクニック、センス、楽曲すべてがトップクラスだが、比較すればメダーリャは学生バンドだろう。
70年代イタリアのヘヴィ・ロックにはザ・トリップ、オザンナやニュー・トロルスが大物で、アルバム単発~二枚程度のバンドでもイル・バレット・ディ・ブロンゾ、メタモルフォッシ、ムゼオ・ローゼンバッハ、アルファタウラス、セミラミス、ビリエット・ペル・リンフェルノ、チェルヴェッロ、フレアなどなどは確実にメダーリャより良い。大手RCAからだからこそ三枚ものアルバムを出せたのか、大手が何で上記単発インディーズの優秀バンドをおいてメダーリャをデビューさせたのかはわからないが(イタリア語のヴォーカルは良い)、とにかくイタリアのバンドは73年を最後に大半が解散する。インフレ国イタリアはオイルショックで経済的に大きな打撃を受けたからで、その点でメダーリャが71年にデビューできたのは幸運だった。でもやはり実力はないので、『聖典』に続く翌年の第二作『我思う故に』も内容はほとんど変わらない。フラワーの第三作『Made in Japan』72、第四作『Make Up』73へのダイナミックな実験を自力でできるバンドではなかった。デビュー作もAB面で33分しかなかったが、セカンド・アルバムはAB面四曲29分しかない。
Il Rovescio Della Medaglia-"Io Come Io" Italy,1972
(A)1.Io
https://www.youtube.com/watch?v=JJe166_eM0U&feature=youtube_gdata_player
2.Fenomeno-a)Proizione/b)Rappresentazione
https://www.youtube.com/watch?v=HWIcUVXczg4&feature=youtube_gdata_player
(B)1.Non Io
https://www.youtube.com/watch?v=RfCV_bsEhk0&feature=youtube_gdata_player
2.Io Come Io-a)Divenire/b)Logia
https://www.youtube.com/watch?v=5exrnW2b0Kg&feature=youtube_gdata_player
メダーリャがイタリアン・ロックで名を残したのは、映画音楽家ルイス・エンリケス・バカロフのロックバンドとオーケストラの協奏曲三部作『コンチェルト・グロッソ』71(ニュー・トロルス)、『ミラノ・カリブロ9』72(オザンナ)に続く『汚染された世界』を担当したからで、確かにイタリアン・ロックの名作に仕上がったがニュー・トロルスやオザンナがオーケストラと対等な力量で強力なアルバムを残したのに較べると、メダーリャはバカロフのアレンジに乗っているだけでもあった。ニュー・トロルスやオザンナはバカロフと対等だったがメダーリャにはとてもそんな器量はなかったわけだが、逆にバカロフにとっては好都合だったのだろう。だから突出した名作とは言えこのアルバムをメダーリャの代表作とは言えないものがある。むしろバカロフの代表作なので、この歯がゆい名作を最後にバンドは解散した。でも21世紀になって復活する。それができたのもこのアルバムの人気のおかげなので、そうなるといじましい気分にすらなる。メダーリャを純粋に代表するのはファーストとセカンドで大したアルバムではないが、それでもオザンナやビリエットらと共通する独特のイタリアらしさはあり、大物ニュー・トロルスよりもそこだけはメダーリャが勝るのは一人一殺ぽい殺気だろう。バカロフに母屋を取られたサード・アルバムでもその雰囲気は残っているのだ。
Il Rovescio Della Medaglia-"Contaminazione" Italy,1973
https://www.youtube.com/watch?v=qTLXbORe49U&feature=youtube_gdata_player