人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Hawkwind - Live Seventy Nine (Bronze, 1980)

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Hawkwind - Live Seventy Nine (Bronze, 1978) Full Album : https://www.youtube.com/playlist?list=PLWfGw2maX1M6JNrraR25kMSGIN8hdQYnj
Recorded at St. Albans, City Hall, 8 December 1979
Released July 1980 : Bronze Records, BRON527/UK#15
(Side A)
1. "Shot Down in the Night" (Steve Swindells) - 7:39
2. "Motorway City" (Dave Brock) - 8:09
3. "Spirit of the Age" (Robert Calvert, Brock) - 8:20
(Side B)
1. "Brainstorm" (Nik Turner) - 8:41
2. "Lighthouse" (Tim Blake) - 6:25
3. "Master Of the Universe" (Turner, Brock) - 4:33
4. "Silver Machine (Requiem)" (Calvert, Brock) - 1:23
(Remaster CD bonus tracks)
1. "Urban Guerrilla" (Calvert, Brock) - 6:28
2. "Shot Down in the Night" [single edit] - 4:18
[Personnel]
Dave Brock - electric guitar, keyboards, vocals
Huw Lloyd-Langton - electric guitar, vocals
Harvey Bainbridge - bass guitar, vocals
Tim Blake - keyboards, vocals
Simon King - drums

 初CD化されたキャッスル・コミュニケーションズ(主にロック系の廉価再発レーベル)盤でもボーナス・トラックこそないが音質は十分良く、見開きの片面にステージ写真、片面には簡潔な解説が載っている。ホークウィンド・フィードバックという公式ファンクラブらしき組織のブライアン・タウンという人が書いているのだが(1991年11月付け)、『ライヴ '79』は他のアルバムにも増してホークウィンドの歴史に欠かせない、と強調している。ブライアン・タウンの解説に補足するかたちで書いていくと簡潔でわかりやすいだろう。
 79年春にはホークウィンドはキャリアのどん底にいた。レコード契約もない状態で、バンドにはデイヴ・ブロック(ギター、シンセサイザー、ヴォーカル)とハーヴェイ・ベインブリッジ(ベース)しか残っていなかった。ブロックはバンドの創始者でリーダー、77年の『クウォーク、ストレンジネス&チャーム』からは唯一のオリジナル・メンバーで、ベインブリッジは78年のホークローズ名義の『25年間』で加入したがホークローズはこれ一作で解散していたし、ホークウィンドも事実上解散状態だった。

 ブロックとベインブリッジはホークウィンドの再編成に乗り出し、サイモン・キング(ドラムス、『25年間』まで在籍)とヒュー・ロイド=ラントン(リード・ギター、1970年のデビュー・アルバム発表後に脱退)、ティム・ブレイク(キーボード、シンセサイザー。元ゴングで、ホークウィンドとは共演経験あり)をバンドに加入させ、再起を狙ってコンサート・ツアーを組んだ。契約レコード会社なしのツアーというリスクの高いものだった。通常のツアーは新作のプロモートが目的で、ツアーの経費もアルバムの売り上げからレコード会社によって提供される。だがホークウィンドは契約レコード会社もプロモートする新作アルバムもなしにのるかそるかでツアーに臨んだ。
 ホークウィンドは最大のヒット・アルバムがライヴ盤『宇宙の祭典』1973だったようにライヴの人気は高く、このツアーはホークウィンドでもベストと名高いチケット完売ツアーになった。会場に入れないファンが各地で続出するほどの評判に、ツアー途中からブロンズ・レーベルとの契約が成立してライヴ・アルバムの制作が行われることになった。1980年7月に『ライヴ '79』が発売されると、事前の評判からアルバムはユナイテッド・アーティスツ時代以来のトップ20(15位)入りヒットを記録した。

 アルバムはセット・リストから精選され、初期の『マスターズ・オブ・ザ・ユニヴァース』(『宇宙の探求』1971より)と『ブレインストーム』(『ドレミファソラシド』1972より)のワイルドなリメイク、ユニークなリズムの『スピリット・オブ・ジ・エイジ』(『クウォーク、ストレンジネス~』より)、新曲ではホークローズ時代のメンバーのオリジナル『ショット・イン・ザ・ナイト』、ブロックの新曲『モーターウェイ・シティ』、ティム・ブレイクの新曲『ライトハウス』など新旧バランス良く取り混ぜている。特にロイド=ラントンのテクニカルなリード・ギターを前面にフィーチャーしたアンサンブルはホークウィンド史上かつてないほど明快なハード・ロック的聴きやすさがあり、ティム・ブレイクのキーボードとシンセサイザーもかつてのゴングやホークウィンドの70年代スペース・ロックのギミック的サウンドよりもモダンなテクノ・スタイルになっている。
 デイヴ・ブロック自身はジェット・マシーンをかけたジャリジャリしたギターのパワー・コードにせよ、ヴォーカル・スタイルにせよ(『ブレインストーム』と『スピリット・オブ・ジ・エイジ』はオリジナルでは作者のターナーやカルヴァートがリード・ヴォーカルだったが)以前とそう違いはないのだが、バンドは10年目にして確実に若返った感触がある。ブライアン・タウンもこのアルバムで復帰したからこそ今日に至るホークウィンドの活動があり、原点といえるアルバムだろう、と解説を結んでいる。1991年の時点でそう言えるばかりでなく、2015年現在でもそう言えるだろう。1970年デビューのロック・バンドがメンバー・チェンジは多々あるとはいえ、2015年現在までさしたるブランクもなくアルバム発表とツアーを続けていて、音楽の鮮度がまったく衰えていない。全然偉大なバンドではないから続いているとも言えて、ホークウィンドはそこが良い。

 なお『ライヴ '79』はコンサートを完全収録したマスター・テープは残っていないらしく、チェリー・レッド・レーベル傘下のホークウィンド専門レーベル・アトムヘンジからのリマスター・デラックス・エディションでもシングル用の2曲しか追加曲がないが、『ライヴ '79』自体人気の高いアルバムなのでプログレッシヴ・ロック専門レーベル・ヴォイスプリントがバンド公認で『ライヴ '79』の1週間前のハマースミス・オデオン公演の完全収録版を2枚組CDでリリースした。音質はあまり良くなく、音楽サイトなどでも「演奏内容が良くてもこの音質では伝わってこない」とあまり評価は高くない。『宇宙の祭典』までのサイケなホークウィンドなら音質劣悪でもいけるのだが、『ライヴ '79』のように真っ当なロックをやっているホークウィンドだと確かに音質が悪いとまずい。
 それでも『ライヴ '79』より倍の曲数を聴けるのは嬉しいし、『PXR5』のライヴ・ヴァージョンなどここでしか聴けない。『ライヴ '79』ではアンコールの『シルヴァー・マシーン』は歌が始まって12小節でどっかーん!と爆発音で強制終了する編集(1分23秒)だったが、ここではちゃんとフル・コーラス聴ける。1999年発売だがまだ廃盤でなく、2枚組だが値段は1枚もの以下の廉価盤なのも謙虚で泣ける。『ライヴ '79』の全曲はもちろん、次のスタジオ・アルバム『レヴィテイション』1980からの曲が多いので、その2枚を先に聴いていればAMラジオ程度のしょぼい音質も耳で補える程度には聴ける。それにこれだってバンド公認発掘盤なのだ。心して聴きたい。

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[Hawkwind - Complete '79 : Collector Series Volume 1]
Recorded at Hammersmith Odeon, 1 December 1979
Released 29 November 1999, Voiceprint Records - HAWKVP4CD
(CD 1)
1. "Shot Down in the Night" (Swindells) - 7:36
2. "Motorway City" (Brock) - 9:07
3. "Spirit of the Age" (Calvert, Brock) - 8:01
4. "Urban Guerrilla" (Calvert, Brock) - 6:25
5. "Who's Gonna Win The War?" (Brock) - 5:58
6. "World of Tiers" (Bainbridge, Lloyd-Langton) - 5:41
(CD 2)
1. "New Jerusalem" (Blake) - 9:34
2. "Lighthouse" (Blake) - 10:08
3. "Brainstorm" (Turner) - 8:10
4. "Satellite" (Brock) - 2:41
5. "PXR5" (Calvert, Brock) - 4:11
6. "Master of the Universe" (Turner, Brock) - 3:14
7. "Silver Machine" (Calvert, Brock) - 4:00
8. "Levitation" (Brock) - 6:20