人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新編☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(37)

 その夜ミッフィーちゃんはなかなか寝つけず、ハローキティの店をみんなで偵察にいったことからメラニーが急にお店を畳もうと言い出したことまでを、順番もばらばらに思い出していました。そうして思い出しているうちに、ハローキティの店の偵察もこれが初めてではなく、従って(それと因果関係があるのだとしたら)メラニーから水商売から足を洗おうと言われたのも最初ではないような気がしてきました。だってミッフィーちゃんはうさぎだし、うさぎは忘れっぽいからです。
 ぞうは決してものごとを忘れないといいますが、あれだけ図体もでかければそれもありかもしれません。でもミッフィーちゃんたちのようなこうさぎがいちいち記憶を貯めこんでいたら頭がはじけてしまいます。もしぞうのお客さんが来たら、とミッフィーちゃんは思い、さぞかしノリが合わないだろうとゾッとしました。ミッフィーたちののん気な接客に怒って暴れ出すかもしれません。暴れたぞうは店を見わたすと、まず気の弱いアギーを踏み殺します。アギーは一瞬何が起こったのか理解しようとして思いつくことを口にしようとしますが、ことばを発する前に踏み殺されてしまうのです。
 それからぞうはどしどしと歩いて来ると、くまのくせにうさぎのノリになじんでいるのん気なバーバラに腹を立てて踏み殺します。バーバラはきっとよくわからないまま圧死してしまうのですが、うっかりメラニーと目を合わせてしまったのが次の犠牲者を決めました。私の順なんておかしいわ、と思いながらメラニーは、ひょっとしたら残ったやつの陰謀かもしれない、と思います。でも残っているのはミッフィーとウインしかいません。
 違うわメラニー、とミッフィーは呼びかけようとしますが、間にあいません。ウインはカウンター席に、ミッフィーはカウンターの中にいました。この順序ならウインからだわ、とミッフィーのxの口が*になりました。ウインはいつも大概は冷静で、殺気立ったぞうが迫ってきても表情ひとつ変わりません。
 そしてウインがふっ、とミッフィーの方を向くと、ぞうもつられてミッフィーに向き直ります。えっ、と思う間もなくミッフィーの頭上にぞうの大きな足の裏がハンマーのようにふりかぶり、まさか自分がぞうに踏まれて死ぬなんて、仲間たちが次々先に殺られても実感もないまま、こんなの嫌ーっ!とミッフィーちゃんは思いました。こんなことを考えていては、寝つけません。