人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(38)

 メデューサの髪は生きている蛇で、彼女の顔を見ると呪いで石に変えられてしまうといいますが、キティちゃんにはそんな恐ろしい髪は生えていませんでした。生えているのはねこのひげで(ねこだから女の子だってひげはあります)、そのひげの一本いっぽんは実は個体をなすワームなのでした。これら群棲するワームはいつもはありきたりな細さの、寄生しているねこの頭の幅に縮小していましたが、宿主の欲求を操作して獲物を捕らえるとストローほどの太さに膨張し、長さも数メートルまで自在に伸ばすことができるのです。
 このワームが分泌する体液は獲物にも宿主にも脳内のセロトニンなどを過剰に放出させ、精神に多幸感、他者との共有感などの変化をもたらし、その効果は3~4時間持続しますが、もっとも強いのは肉体的な快楽も高まる最初の1~2時間です。ワームが得る栄養はこの獲物が持続的なエクスタシーに陥っている状態での神経電流で、これはワーム単独ではできず、寄生する宿主と獲物をワームが中継することで得られます。ワームはそういう生物でした。
 ねこのひげは密集したものではなく比較的まばらなものですが、ワームは機能しない時にはマイクロファイバー並みに細くなれましたから数十尾ほどが絡みあって一本のひげになり、活動し始めるとキティちゃんの顔面全体からうねうねとしたワームの群れが広がり、獲物の咽喉や頸椎、口腔など効率の良い箇所に尖端をもぐり込ませるのでした。もちろん見ていて気持の良い光景ではありませんから普段はハローキティもお客さんと二階の部屋に引っ込んでやるのですが、ワームは宿主の精神状態を察知して自分の都合良く操作することもあります。訳あり風の女性客(がミッフィーちゃんたちだったわけですが)が出て行き、どうやら今日はふりの客が多いとわかるとワームは一斉にキティちゃんの頭にドーパミンを発生させました。それはジョータローのスタープラチナよりも、しんのすけのケツだけ星人の舞よりも、スヌーピーの盗塁よりも早かったのです。
 男性客全員が恍惚のあまりパンツに漏らしてへたりこみ、女性客と女性従業員は恐怖に凍りつきました。男性従業員、つまりダニエル・スターですが、ダニエルはカウンターにしゃがみこみながらみっともなく手淫して手っ取り早くわれに帰ると、これが店の繁盛につながっているとはいえ、違法ぎりぎりじゃないか、と心配でならない気分になりました。