人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

魍猟綺譚・夜ノアンパンマン(20)

 でかく定義すればだ、とばいきんまんドキンちゃんの蹴りの入った腰を慎重に起こしながら、これまで説明したバイブレーターとは、振動や手動による操作により快感を得られる性具のことを指す。女性の膣に挿入できるようになっており、女性器や性感帯をその振動や動きで刺激し性的快楽を得ることができるというものなのだ。男の方もバイブレータを相手に使用することで普段より強い性的興奮を得ることができるということらしいな。また、勃起力の弱まった中高年男性が補助具として使用する、というのもあるだろう。女性のマスターベーションにも用いられているくらいだから、セックスで得られる快感が少ないタイプの女性にはバイブレータを使用したセックスが効率的、というのもある。よく使われる用法では男性器の挿入中に女性の陰核をローターで振動刺激するやり方だな。正常位でも可能だし、横臥位ならなおやりやすいが、後背位がもっとも行いやすいだろう。また、同時に両方に指を入れるとわかるが、膣と肛門は皮一枚しか隔てていないので、ローターを膣に挿入したままアナルセックスすると男根にもローター振動が伝わってきて具合が良い。ただし奥入れ・長時間は身がもたないので無理は禁物だが。
 それで、とドキンちゃんは、ばいきんまんもそれを全部やってみたっていうの?と痛いところを突いてきました。ばいきんまんは聞こえなかったそぶりで、バイブレータにも立派な起源があるのだ、と解説を続けました。それまでは女性特有の子宮の鬱血が原因と考えられていた疾病症状、ヒステリー、倦怠感、抑うつ症状などの治療目的から、19世紀初頭まで骨盤振動マッサージによる医療行為として器具を用いた治療が行われていたのがバイブレータの起源とされるのだ。古くは施術者の手技によって女性器を刺激する治療が行われていたが、これは重労働を伴い手首を痛める医者が続出したために、水流を女性器に直射する道具やゼンマイ駆動の振動器、蒸気駆動で下腹部を打突する診療台などが開発されるようになった。それが小型化した手動式、やがて電動式になる頃は女性器の鬱血による疾患、という医学的所見自体が過去になったが、性具としてのバイブレータは世界中の文化に残ったのだ。
 それでばいきんまんはどうしようっていうのよ。おれさまはひらめいたのだ!とばいきんまんは山のようなアダルトグッズを前に意気軒昂に咆哮しました。
 第二章完。