人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

The Thelonious Monk Quartet - Thelonious in Action (Riverside, 1958)

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The Thelonious Monk Quartet - Thelonious in Action (Riverside, 1958) Full Album
Recorded at the Five Spot Cafe, August 7, 1958
Released; Riverside Records mono LP RLP 12-262, 1958/stereo LP RLP 1190, 1960
All songs were composed by Thelonious Monk, except where noted.
(Side one)
1. Light Blue : https://youtu.be/twriNk0N9qQ - 5:14
2. Coming on the Hudson : https://youtu.be/BIffRglKZTQ - 5:24
3. Rhythm-A-Ning : https://youtu.be/Bmg_cuPg2Ig - 9:25
4. Epistrophy (Theme) (Kenny Clarke-Thelonious Monk) : https://youtu.be/1H5-w6mIDU4 - 1:05
(Side two)
1. Blue Monk : https://youtu.be/N7PdjPvM_E0 - 8:31
2. Evidence : https://youtu.be/ZZwKtBLO-zw - 8:48
3. Epistrophy (Theme) (Clarke-Monk) : https://youtu.be/1H5-w6mIDU4 - 1:05
(CD Bonus Tracks)
1. Unidentified Solo Piano : https://youtu.be/dIAq4SJUmlA - 1:54
2. Blues Five Spot : https://youtu.be/QbLZnul8kQA - 9:56
3. In Walked Bud : https://youtu.be/rLwZ0QnwUBg - 10:57
4. Epistrophy (Theme) (Clarke-Monk) : https://youtu.be/1H5-w6mIDU4 -1:05
*CD bonus tracks were recorded on July 9, 1958
[ Personnel ]
Thelonious Monk - piano
Johnny Griffin - tenor saxophone
Ahmed Abdul-Malik - bass
Roy Haynes - drums

 このブログでは先にセシル・テイラー、アンドリュー・ヒルレニー・トリスターノを、それぞれデビューから60年代いっぱいまで順を追ってアルバム紹介してきた。いずれも優れたジャズ・ピアニストで、しかも一人一派と言ってよい作風だった。ホーン奏者ではオーネット・コールマンエリック・ドルフィー(ともにアルトサックス)の主要作品をリンクが引ける限り、やはり年代順にご紹介してきた。本当はアルトサックスではチャーリー・パーカー、ピアノではバド・パウエルが最重要ジャズマンなのだが、リンクがすっきり引けないので単発的にアルバム単位でのご紹介にとどまざるを得なかった。パーカーやパウエルの場合、年代ごとに作風の変遷を把握するとしないのでは楽しめる度合いがずいぶん違ってくる。
 ジャズマンに限らないが、作品を編年順に追うことに意義のある作家と、あまりそういうのは作品理解と関係のない作家がある。前者の場合は創作力の消長が年代的に表れていくアーティストに多く当てはまるからわかりやすいが、後者の場合は必ずしもアーティストのキャリアが直接には編年順には作品に反映していないようなタイプで、ある意味前者のようなタイプよりわかりづらい。前者ではアーティストとしての創作力の盛衰が率直に作品に現れるが、後者の場合はキャリアと作品との乖離が起こるのは共通した画一的背景があるのではないからでもある。早いうちに作風を確立してアルバムごとにアイディアを小出しにしていったアーティストもいれば、請け負い企画にひっぱりだこで器用に参加作を増やしていったジャズマンも後者のうちに含まれる。セロニアス・モンクはレコード・デビューの時点で生涯を押していける独創性を確立していた。以後のモンクのアルバムは参加メンバーによって印象が左右されているものが大半で、モンク自身はキャリアの累積による作風の変化がほとんど見られなかったアーティストになるだろう。
 (Original Riverside "Thelonious in Action" Liner Notes)

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 セロニアス・モンクについてはクリント・イーストウッド制作のドキュメンタリー映画セロニアス・モンク ストレート・ノー・チェイサー』1988が古典となっており、書籍では昨年秋に刊行された村上春樹編・訳『セロニアス・モンクのいた風景』が文庫化されたらお薦めしたい。どんな辞典やガイドブック、音楽サイトでもセロニアス・モンクはジャズ史上最重要ジャズマンとされているか、ジャズに関してはルイ・アームストロングデューク・エリントンだけしか載らないか、だろう。つまりモンクと同じくらい偉くて、モンクより早い世代のジャズマンというとこの2人になる。パーカーやパウエルよりもモダン・ジャズ全体を文化として体現した人、といえる。つまりパーカーやパウエルは生前ついに文化人とは見做されなかったが、モンクは生前のうちに本人の意志とは関係なく文化人に祀り上げられた。
 モンクが載らないなら載らなくても仕方がない偉い人にはカウント・ベイシーチャーリー・パーカーがいるが、ここまで名前を上げた5人のジャズマンが新旧の古典ジャズの生みの親で、ついでに言えば舞台用ミュージカル曲やフォーク・ブルースから、明快なアンサンブルでアップ・トゥ・デイトなポップスやモダン・ブルース、R&B、ロックン・ロールなどのジャンルにポピュラー音楽の主流を転換させたのも、多くはジャズ・ミュージシャンのスタジオ・セッションマン起用によるものだった。20世紀にアメリカ中心に起こったポピュラー音楽の改革は、即興的な自発性に富んだバンド・アンサンブルが主流音楽全般に浸透したことにあり、それは黒人ジャズマンが既成音楽を作り変えたものが白人リスナーに受容され、やがて白人ミュージシャンにも同様なスタイルが現れる、という過程を経たものだった。ジャズの場合史上初のソロイストとしてルイ・アームストロングがおり、パーカーやパウエルもソロイストの系譜に属する。エリントンのスタイルとモンクのスタイルは戦前と戦後を二分するアンサンブル上の発想の改革だった。パーカーやパウエルと同世代で、活動は彼らより早いくらいでありながら、モンクの真価が認められるまでレコード・デビューから10年あまりかかったのも、モンクの音楽が志向していたアンサンブル上の改革をグループ表現として実現できるまでジャズマンにすら困難だったことによる。
 (Original Riverside "Thelonious in Action" LP Side1 Label)

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 モンクがピアノ・トリオでようやく新しいグループ表現を成功させたのは『Thelonious Monk Trio』1952-1954だったが、管楽器入りの編成では試行錯誤が続いた。1956年~57年にかけて録音された『Brilliant Corners』『Monk's Music』『Mulligan Meets Monk』では『Brilliant Corners』は当時のジャズの水準では前衛的すぎ、『Monk's Music』は当時一般的なハードバップ・フォーマットの録音ではモンクの音楽が破綻してしまう皮肉な例となり、1ホーンでアンサンブルの形式化から逃れた『Mulligan Meets Monk』が小ぶりなアルバムながらもっとも無理がなかった。同作が録音された1957年夏に、モンクはマイルス・デイヴィスクインテットを謹慎馘首されていたジョン・コルトレーン(テナーサックス)をフロントにしたカルテットで念願のライヴ活動を再開し、このカルテットは大評判を呼んで年末までクラブの長期出演がかない、モンクとコルトレーンは一躍ニューヨークの一流ジャズマンへと昇格した。リヴァーサイド・レーベルはカルテットのスタジオ録音を望んだが、コルトレーンがプレスティッジ・レーベル専属だったためアルバム片面分の録音しか実現しなかった。
 翌年にもモンクは同じファイヴ・スポット・カフェからクラブ出演の依頼を受けた。コルトレーンマイルス・デイヴィスのバンドに復帰していたので、1ジャズ・メッセンジャーズのメンバー再編でフリーになってリヴァーサイド・レーベル専属になっていたジョニー・グリフィン(テナーサックス、10年来の年少の知己であり愛弟子でもあった)をフロントに、前年のウィルバー・ウェア(ベース)、シャドウ・ウィルソン(ドラムス)に替えてアーメット・アブダル・マリク(ベース)とロイ・ヘインズ(ドラムス)を迎えたカルテットで前年同様に大好評の長期出演が行われた。リヴァーサイドでは前年のコルトレーンの時にライヴ録音をしておけば、と悔やんでいたので、グリフィンとアブダル・マリクもリヴァーサイド専属という好都合もあり、早々とライヴ・アルバムが企画された。それがLPでは2枚で分売され、1958年のうちに矢継ぎ早に発売された『Thelonious in Action』と続編『Misterioso』になる。
 (Original Stereo "Thelonious in Action" LP Front Cover)

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 次回では『Misterioso』をご紹介するので、今回はアルバムの背景を概略解説するにとどめたい。なおモンクは1951年にバド・パウエルへの麻薬所持容疑について黙秘したことから60日間拘置され、ニューヨークの音楽家組合からクラブ出演禁止処分を受けて、それがようやく解除されたのが1957年だった。コルトレーンとのカルテットは起死回生のカムバックだった。なお、今回引いたリンクのうち3種類の「Epistrophy(Theme)」はライヴのエンディング・テーマだが、『Thelonious in Action』でのテイクのリンクが引けなかったので別のアルバムから引いた。ジングルみたいなもので大差ないのだが、お断りしておく。『Thelonious in Action』と『Misterioso』に使用されたライヴ録音の全容は以下の通りになる。7月9日はテスト録音で、8月7日が本番の収録になった。なお、このアルバムはモンク最後のモノラル・リリースになり、ステレオ盤は1960年に発売された。

[ Thelonious Monk Quartet ]
Johnny Griffin (tenor saxophone -2/5) Thelonious Monk (piano) Ahmed Abdul-Malik (bass -2/5) Roy Haynes (drums -2/5)
"Five Spot Cafe", NYC, July 9, 1958
1. Unidentified Solo Piano Original Jazz Classics OJCCD 103-2
2. Blues Five Spot -
3. In Walked Bud / Epistrophy (theme) -
4. 'Round Midnight Original Jazz Classics OJCCD 206-2
5. Evidence -
* Original Jazz Classics OJCCD 103-2?? Thelonious Monk - Thelonious In Action
* Original Jazz Classics OJCCD 206-2?? Thelonious Monk - Misterioso
[ Thelonious Monk Quartet ]
Johnny Griffin (tenor saxophone -1/11,13) Thelonious Monk (piano) Ahmed Abdul-Malik (bass -1/11,13) Roy Haynes (drums -1/11,13)
"Five Spot Cafe", NYC, August 7, 1958
1. Light Blue Riverside R 45421, RLP 12-262
2. Coming On The Hudson -
3. Rhythm-A-Ning Riverside RLP 12-262
4. Epistrophy (theme) -
5. Blue Monk -
6. Evidence -
7. Epistrophy (theme) -
8. Nutty Riverside RLP 12-279
9. Blues Five Spot -
10. Let's Cool One -
11. In Walked Bud Riverside RLP 12-279, RLP 483/484
12. Just A Gigolo Riverside RLP 12-279
13. Misterioso -
* Riverside RLP 12-262, RLP 1190; Original Jazz Classics OJC 103, OJCCD 103-2?? Thelonious Monk - Thelonious In Action
= Milestone M 47043?? Thelonious Monk - At The Five Spot
* Riverside RLP 12-279, RLP 1133; Original Jazz Classics OJC 206, OJCCD 206-2?? Thelonious Monk - Misterioso
= Milestone M 47043?? Thelonious Monk - At The Five Spot
* Riverside RLP 483/484, RS 9483/9484?? The Thelonious Monk Story
* Riverside R 45421?? Thelonious Monk - Light Blue / Coming On The Hudson