人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Sun Ra - Live at Montreux (Saturn, 1976) / Cosmos (Cobra, 1976) / In Some Far Place (Art Yard, 2016)

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Sun Ra - Cosmos (Cobra, 1976) Full Album : http://www.youtube.com/playlist?list=PL2n1428fctHwpLTaernl0EA_cFk4nHezy
Recorded at Studio Hautefeuille, Paris, August 1976
Released by Cobra Disque COB-37001, 1976
All composed and arranged by Sun Ra.
(Side A)
A1 The Mystery Of Two - 5:47
A2 Interstellar Low-Ways - 4:45
A3 Neo Project #2 - 5:15
A4 Cosmos - 2:50
(Side B)
B1 Moonship Journey - 6:30
B2 Journey Among Stars - 5:50
B3 Jazz From An Unknown Planet - 8:10
[ Sun Ra & His Arkestra ]
Sun Ra - Rocksichord
Ahmed Abdullah - trumpet
Vincent Chancey - french horn
Craig Harris - trombone
Danny Davis, Marshall Allen - alto saxophone, flute
John Gilmore - tenor saxophone
Danny Ray Thompson - baritone saxophone, flute
Eloe Omoe - bass clarinet, flute
Jac Jackson - bassoon, flute
R. Anthony Bunn - electric bass
Larry Bright - drums

 1975年のサン・ラ音源は1月のコンサートを収録した発掘盤『Live In Cleveland』(Leo, 2009)しかありません。ライヴ活動は活発だったようですが、外部とのレコード契約もなく、サターン・レーベルの方もマネジメントではなくバンド自身が流通・販売まで手がけるようになって1年あまり経ちましたから、アルバム制作は少々負担になってきていたのかもしれません。そのかわり、翌1976年のアーケストラの活動は目覚ましいものがありました。ヨーロッパ・ツアーに伴うスイスのモントルー・ジャズ・フェスティヴァルへの出演とそのライヴ・アルバム、そしてパリでフランスのコブラ・レーベル(先鋭的な音楽レーベルでジャンルは限定せず、日本発売されたものではフランスのエレクトリック・ノイズ・バンド、エルドンなどがあります)でスタジオ・アルバム『Cosmos』を録音します。『Live At Montreux』と『Cosmos』は'70年代のサン・ラ・アーケストラではもっとも商業的に成功したロングセラー・アルバムになり、今日までに6種類あまりのレーベルから再発売されています。この2作の出来は素晴らしく、これまで最大の28人編成アーケストラで行われた5年ぶりのヨーロッパ・ツアーは周到なアレンジとリハーサルが行われたもので、モントルーでの成功は世界的な評価のかかった正念場ですから殊の外タイトなステージだったろうと思われます。
(Original Cobra "Cosmos" LP Liner Cover & Side A/B Label)

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 直後のスタジオ盤「Cosmos」ではアルバムのまとまりのために12人編成に縮小されますが、1970年代半ばに世界的にジャズ界で行われたのはクロスオーヴァー(フュージョン)・ジャズの確立と4ビート・ジャズの再評価でした。サン・ラはクロスオーヴァー的でもありましたがバンドの出発点は4ビート・ジャズであり、76年のアーケストラはこれまでになく4ビート・アンサンブルに固執しています。リヴァイヴァル的なものではなく70年代型4ビートであり、サン・ラのクロスオーヴァー性は黒人音楽としてのジャズを踏まえていましたから決して商業的な転換ではなかったので、上手く時代の風潮とサン・ラの志向性が合致したのが『Live at Montreux』と『Cosmos』でした。4ビートであり、クロスオーヴァー的な現代性もある上、テーマ~ソロ~テーマの構成やフィーチャリング・ソロイストも明快な演奏です。不満があるとすれば、74年までのアーケストラの楽曲や演奏には常にマジカルな混沌がありました。ですがここでは録音やミキシングまでメジャーでプロフェッショナルなバンドになってしまったアーケストラがいます。実際のステージ模様の映像があります。『Live at Montreux』のアルバム音源のリンクが引けなかった代わりに、同一ステージの一部をシューティングした映像があります。これがサン・ラが決定的に世界的なジャズ・ジャーナリズムに認知された瞬間をとらえたステージです。また、今年4月にサン・ラのアルバム再発に定評あるArt Yardレーベルからリリースされた、ラジオ放送音源と思われる発掘盤『In Some Far Place ; Roma '77』は『Live at Montreux』とほぼ同内容のステージですので、今回併載します。ジャズ・スタンダード曲はローマのライヴではさらに増えていますので、音質の良さともども大変素晴らしく、これまで埋もれていたのがもったいない音源です。

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Sun Ra - Live at Montreux (Saturn, 1976)
Recorded at Montreux Jazz Festival, Switzerland, July 6, 1976
Released by El Saturn Records MS-87976, 1976 / Reissued by Phonogram/Inner City Records IC-1039, 1978
(Reissued Phonogram/Inner City "Live at Montreux" LP Front Cover)

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Sun Ra & His Cosmo Swing Arkestra - Live at Montreux 1976 (1) : http://youtu.be/8SbvOPo4tHM
Sun Ra & His Cosmo Swing Arkestra - Live at Montreux 1976 (2) Take The A Train : http://youtu.be/k341z3dsXy4

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Sun Ra - In Some Far Place: Roma '77 (Art Yard, 2016) Full Album: http://youtu.be/EhZqoFKdclY
Recorded at Roma, early1977 (Date Unknown)
Released by Art Yard STRUT122LP, April 2016
All composed(exept as credited) and arranged by Sun Ra.
(Tracklist)
CD1-1. Introduction - 4:05
CD1-2. Untitled 1 - 3:24
CD1-3. Spontaneous Simplicity - 6:40
CD1-4. Space Is The Place - 6:51
CD1-5. Calling Planet Earth - 5:41
CD1-6. Outer Spaceways Incorporated - 6:46
CD1-7. Penthouse Serenade - 6:10
CD1-8. Untitled 2 - 4:23
CD1-9. Trying To Put The Blame On Me - 3:44
CD1-10. Sometimes I Feel Like A Motherless Child (Gabrielle Ann Goodman) - 5:07
CD2-1. How Am I To Know? (Dorothy Parker, Jack King) - 4:54
CD2-2. I Cover The Waterfront (Edward Heyman, Johnny Green) - 4:55
CD2-3. Love In Outer Space - 7:39
CD2-4. El Is A Sound Of Joy - 22:33
CD2-5. St Louis Blues (William Handy) - 7:54
CD2-6. Ladybird (Tadd Dameron)/ Half Nelson (Miles Davis) - 4:41
CD2-7. Willow Weep For Me (Ann Ronell) - 7:14
CD2-8. Take The 'A' Train (Billy Strayhorn) - 3:57
[ Sun Ra & His Arkestra ]
Sun Ra - organ, synthesizer, vocal
Ahmed Abdullah, Akh Tal Ebah - trumpet, vocal
Vincent Chancey - french horn
Craig Harris - trombone
Marshall Allen, Pat Patrick - alto saxophone
John Gilmore - tenor saxophone
Danny Ray Thompson - baritone saxophone, flute
Eloe Omoe - bass clarinet, flute
James Jacson - basoon, ancient Egyptian infinity drum, flute
Unknown Italian Musician(possibly) - bass
Luqman Ali - drums
Atakatune - conga
Eddie Thomas - percussion
June Tyson - vocal

 今回の1976年の2作(と1977年の発掘ライヴ)で70年代のサン・ラ・アーケストラの前期は音楽的にも活動サイクルとしても一旦完結したと言っていいでしょう。1994年にLeoレーベルから発掘発売された『A Quiet Place in the Universe』がやはり1976年~1977年のヨーロッパ・ツアーから編まれたものですが、複数会場からの不完全収録の上に曲数も6曲と少なく、18分の新曲「I Pharaoh」(1979年にアルバム録音)を早くもライヴ音源で聴けるのが唯一の収穫です。残念ながら『A Quiet Place in the Universe』のリンクもご紹介できませんが、内容はモントルーとローマの中間でダイジェストにしたようなライヴ・コンピレーションです。さて、次回からは1977年~1979年のサン・ラ・アーケストラのご紹介ですが、近作ほどリンクをご紹介できるアルバムが減っていくので、せめて要となるアルバムだけでも押さえていければと思っています。