人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Sun Ra - Aurora Borealis (Ra Rachmaninov) (Saturn, 1981)

イメージ 1

Sun Ra - Aurora Borealis (Ra Rachmaninov) (Saturn, 1981) Full Album
Recorded Live on October 4 or December 4, 1980
Released by El Saturn Records Saturn 10480, Saturn 12480, 1980
(Side A)
A1. Prelude in C# Minor (Rachmaninov) : https://youtu.be/Zxzf1YC2K7Q - 4:08
A2. Quiet Ecstasy (Sun Ra) : https://youtu.be/mWsx94M73bk - 4:48
(Side B)
B1. Aurora Borealis (Sun Ra) : https://youtu.be/Bc2NM06bXDo - 4:26
B2. Omniscience (Sun Ra) : https://youtu.be/ahjnwgnMsHY - 9:13
(CD Bonus Track)
1. Love In Outer Space (Bonus Track) (Sun Ra) : https://youtu.be/x4VXiTEhsLY - 4:52
[ Personnel ]
Sun Ra - unaccompanied solo piano

(Original El Saturn "Aurora Borealis" LP Liner Cover & Side A Label)

イメージ 2

イメージ 3

 ストレート・ジャズの快作『Sunrise in Different Dimensions』、ここはどこで今はいつなのとのけぞるような過激フリー・ジャズ作品『Voice of the Eternal Tomorrow』に続いて本作『Aurora Borealis (Ra Rachmaninov)』 はラフマニノフのサン・ラ流解釈まで含んだソロ・ピアノ・アルバムです。その上どれも新レパートリー中心のライヴ・アルバムというのは'60年代中期または'70年代前半のマイルス・デイヴィスのようで(キース・ジャレットという人もいますが)、この旺盛なんだか真剣勝負なのか手抜きなんだかわからないアルバム制作の姿勢というのは何なのでしょうか。CDでは5分ほどのボーナス・トラックが追加されていますが、オリジナルLPではA面は9分ちょっと、B面は13分半しかありません。プレーヤーをリピートにしてかけていると聴いたばかりの曲がまた流れてくるので時間の感覚がいかれてきます。収録時間にしろ現代音楽かインダストリアル系のアルバムのようなジャケットにしろバンド直営のサターン・レーベル作品ならではのセンスにくらくらします。タイトルも素敵ですからおシャレなピアノ・アルバムと間違えてしまう犠牲者を生みやしないかと心配になります。サン・ラのソロ・ピアノ・アルバムは歿後発掘のライヴ作品を除けば'78年の『Solo Piano Vol.1』と『St.Louis Blues (Solo Piano Vol.2)』以来で、生前発表のソロ・ピアノ・ライヴとしては初のアルバムになります。
 録音月日に2説あるばかりか会場も不明ですが、音響状態からすると観客を入れたスタジオ・ライヴではなくリアル・ライヴでしょう。前作のスクワッド・シアターのライヴ同様観客のマナーが良いところから、公開ライヴ収録として会話・飲食・出入り禁止で録音したものかと思われます。だとすればジャズ・クラブ録音ではなさそうです。演奏の特色としては'78年のソロ・ピアノより一段と黒々としていますが、サン・ラの黒さはアーシーに響くのではなく、白人ジャズ・ピアニストとは異なる角度から都会的な知的洗練を感じさせるものです。ディジー・ガレスピーのアレンジによる「All The Things You Are」のあのイントロ・オスティナートを使ったインプロヴィゼーション・ヴァリエーションなどはややくどさを感じますが、アルバム全体としてはソロ・ピアノによるバラード集を意図したものでしょう。アーケストラの小編成作品やトリオ演奏のパートで得意とするような軽みというよりは、こってりとした味わいで統一されたソロ・ピアノ作品なので、サン・ラのアルバムの中では異色作でもあり、ファン・アイテムとまでは言いませんが好みを分ける作品でもありそうです。