人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ザ・ヤードバーズ The Yardbirds - リトル・ゲームズ Little Games (Epic, 1967)

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ザ・ヤードバーズ The Yardbirds - リトル・ゲームズ Little Games (Epic, 1967) Full Album : https://youtu.be/XFGsNsbgCRs
Recorded at Olympic Studios, London in 5 March 1967 and at De Lane Lea, London in 29 April - 1 May 1967
Released by Epic Records Epic (LN 24313/BN 26313), 10 July or 24 July 1967
Produced by Mickie Most
(Side one)
1. Little Games (Harold Spiro, Phil Wainman) - 2:25
2. Smile on Me (Chris Dreja, Jim McCarty, Jimmy Page, Keith Relf) - 3:16
3. White Summer (Page) - 3:56
4. Tinker, Tailor, Soldier, Sailor (Page, McCarty) - 2:49
5. Glimpses (Dreja, McCarty, Page, Relf) - 4:24
(Side two)
1. Drinking Muddy Water (Dreja, McCarty, Page, Relf) - 2:53
2. No Excess Baggage (Roger Atkins, Carl D'Errico) - 2:32
3. Stealing Stealing (Gus Cannon) - 2:42
4. Only the Black Rose (Relf) - 2:52
5. Little Soldier Boy (McCarty, Page, Relf) - 2:39
[ The Yardbirds ]
Keith Relf - vocals, harmonica, percussion
Jimmy Page - guitars
Chris Dreja - bass guitar, backing vocals
Jim McCarty - drums, percussion, backing vocals
(Additional personnel)
Bobby Gregg or Dougie Wright - drums on "Little Games"
John Paul Jones - bass, cello and oboe arrangement on "Little Games"
Chris Karan - tabla on "White Summer"
Ian Stewart - piano on "Drinking Muddy Water"
Unidentified - oboe on "White Summer"

 ヤードバーズのスタジオ・アルバムとしては2作目、通算3作目になった本作『Little Games』はイギリス本国では1985年まで発売されず、アメリカ原盤で当初アメリカとヨーロッパの数国で発売されたきりでした。ヤードバーズは'60年代のイギリスのビート・グループでも特異な位置にいたバンドで、ライヴ収録によるファースト・アルバム『Five Live Yardbirds』1964.12はエリック・クラプトンのデビュー・アルバムでもあり、初のスタジオ録音によるセカンド・アルバム『Yardbirds (Roger the Engineer)』1967.7はクラプトンの後任ギタリスト、ジェフ・ベックのデビュー・アルバムで、さらに本作『Little Games』はベックの後任で参加したジミー・ペイジ(セッション・ミュージシャン出身)のバンド・ギタリストとしてのデビュー・アルバムになったのです。つまりクラプトン時代、ベック時代、ペイジ時代にそれぞれ1枚ずつアルバムを残しているわけですがそれだけとも言えるわけで、クラプトン時代にはアルバム未収録シングル3枚、ベック時代にはアルバム未収録シングル5枚(イタリア発売限定シングル含む)ないし4枚、ベックとペイジの両者同時在籍時にアルバム未収録シングル1枚、ペイジ時代にアルバム未収録シングル3枚、とアルバム・アーティストとしてもシングル・アーティストとしても中途半端な販売戦略が裏目に出たバンドでした。たとえばキンクスはアルバム・アーティストとしての面が強く、ホリーズはシングル・アーティストとして強く、ビートルズストーンズはアルバムもシングルも強く、次いでアニマルズはアルバムとシングル両面で強く、プリティ・シングスザ・フーヤードバーズと似てアルバムは寡作でしたがザ・フーのヒット実績は大きく、プリティ・シングスヤードバーズより地味でしたがしぶとく長い活動を続けました。
 ジミー・ペイジ(1944-)は実はエリック・クラプトン(1945-)の脱退時にすでに第一候補に上げられてヤードバーズ加入を勧誘されていたのですが、フリーランスのセッション・ミュージシャンとしての収入が高かったために給料制のヤードバーズ加入に難色を示し、交流のあったセミ・プロ・バンド、トライデンツのジェフ・ベック(1944-)を推薦したのです。ベックはセッションマンなど向かない頑固な性格の上に貧乏で、最新のスーツで揃えたヤードバーズに混じるとホームレスのようだったといいます。しかしベックのギターの革新性は音楽面でヤードバーズを当時のブリティッシュ・ロックの最前線に押し上げました。シングル5枚を経てアルバム『Yardbirds (Roger the Engineer)』制作時にはすでにベックは独立して自分のバンドを持つ計画を周囲の勧めやベック本人の意欲から固め、ベック脱退の契約満了前に引き継ぎのためまたもやペイジが勧誘されます。またヤードバーズの音楽的リーダーだったベースのポール・サミュエル=スミスは『Yardbirds (Roger the Engineer)』完成後にプロデューサー専業に転向するため脱退していました。セッションマンよりバンド・ギタリストの時代が来たと判断したペイジは加入を承諾しますが、ヤードバーズにはクリス・ドレヤというサイド・ギタリストがいたため当初ペイジはサミュエル=スミスの後任ベーシストとして加入したのです。ですがドレヤとペイジの立場はすぐに逆転し、ドレヤがベースに回ってベックとペイジの2リード・ギター体制がベック脱退のほんのわずかな間だけ続きます。映画『Blow Up』(ヤードバーズも出演)のサントラに提供した「Stroll On」(「Train Kept a Rollin'」の改作)、シングル「Happenings Ten Years Ago c/w Psyco Daisies」がベック&ペイジの2ギター時代の全録音です。そしてベック脱退後ヤードバーズはメンバーを補充せずペイジの1ギター・バンドになりました。
(Original Epic Records "Little Games" LP Liner Cover & Side 1 Label)

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 ジェフ・ベック脱退後のヤードバーズは急激にイギリス本国での人気が凋落したので『Little Games』は本格的スタジオ・アルバム第2作にもかかわらずアメリカのエピック原盤、発売もアメリカの他ドイツ、イタリア、フランスなどロックの売れる一部のヨーロッパ諸国のみになりまひた。しかし本作は『Five Live Yardbirds』や『Yardbirds (Roger the Engineer)』のような革新性こそありませんが、十分秀作と呼べる充実したアルバムです。ビートルズの『Sgt.Pepper's Lonely Club Band』発売が1967年6月、当時ビートルズの最新シングル「Penny Lane c/w Strawberry Fields Forever」が1967年2月(アルバム未収録)、ストーンズは『Between the Buttons』が1967年1月、シングル「Let's Spend the Night Together c/w Ruby Tuesday」が同時発売ですから、1967年のブリティッシュ・ロックのアルバムとしてはいい線を行っていると言えるのです。プロデューサーのミッキー・モストはなるべくポップ路線のヤードバーズを狙い、外部ライター提供のキャッチーなA1, B2を演らせていますがアレンジはヤードバーズ流サイケ・ポップ路線で違和感がなく、ブルース曲の改作B1、フォーク曲の改作B3もアルバムの流れに上手くはまっています。ライヴで押した『Five Live Yardbirds』はともかく『Yardbirds (Roger the Engineer)』はオリジナル曲が多彩な分だけ曲単位では良くてもやや散漫なアルバムになりましたが、本作では楽曲の出来はさらに良くなり多彩さにも磨きがかかった上にアレンジの統一感でアルバムの密度が増しています。これは明らかにジミー・ペイジの才能であり、アレンジのブレインにセッションマン仲間のジョン・ポール・ジョーンズを迎えた効用です。本作はこれまでにヤードバーズが試した音楽性が昇華され次の次元にまで進む予感を抱かせますが、本作完成の後ペイジ在籍のヤードバーズは1968年8月までに以下のシングルを発表して解散しました。ペイジ、ジョーンズが強力な新人ヴォーカルとドラムスを迎えてニュー・ヤードバーズを引き継ぎ、すぐにレッド・ツェッペリンと改名したのは有名な話です。『Little Games』からの先行シングル、アルバム同時発売シングル、アルバム発売後のシングル合わせて4枚のシングルAB面8曲中にアルバム未収録曲が6曲あります。いずれも現行CD版『Little Games』にボーナス・トラック収録されていますが、よりキャッチーかつハード・ロックに近づいた佳曲ぞろいです。「Think About It」はヤードバーズ十八番「Train Kept a Rollin'」と同じくエアロスミスによるカヴァーで知ったリスナーも多いのではないでしょうか。そして『Little Games』後のライヴでは、本作のA3ですでに試みられているようにペイジによるヤードバーズツェッペリン化計画が着々と進行します。それもまたご紹介したいと思います。
●3/1967 Little Games / Puzzles : https://youtu.be/NxgD20QSu_8
US Epic (5-10156) #51
●7/1967 Ha Ha Said The Clown : https://youtu.be/EDboa3NH6JA / Tinker Tailor Soldier Sailor : https://youtu.be/Ua6PAhihtAA
US Epic (5-10204) #45
●10/1967 Ten Little Indians : https://youtu.be/dyqkeMlcGFE / Drinking Muddy Water
US Epic (5-10248) #96
●3/1968 Goodnight Sweet Josephine : https://youtu.be/0vkp57lJ2zE c/w Think About It : https://youtu.be/UseyCdGNfaY
US Epic (5-10303) #127