人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Sun Ra - Nuits de la Fondation Maeght Volume 2 (Shander, 1971)

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Sun Ra - Nuits de la Fondation Maeght Volume 2 (Shander, 1971) Full Album
Recorded at Saint Paul de Venice, France, August 3, 1970
Released by Shander Disques SR-10.003, France(1971), RCA SHP-6204, Japan(1971)
All Written & Arranged by Sun Ra.
Side A : http://youtu.be/V7zStQ4BwLw
A1. Friendly Galaxy Number 2 - 8:44
A2. Spontaneous Simplicity - 10:19
Side B : http://youtu.be/pB2lNj1LDf4
B1. The World of The Lightning - 5:54
B2. Black Myth - 7:32
- A) Shadows Took Shape
- B) The Strange World
- C) Journey Through the Outer Darkness
B3. Sky - 3:31
[ Sun Ra Arkestra]
Sun Ra - electric piano, organ, Minimoog
Kwame Hadi - trumpet
Akh Tal Ebah - cornet, trumpet
John Gilmore - tenor saxophone, drum, vocals
Marshall Allen - alto saxophone, flute, oboe, piccolo, percussion
Pat Patrick - baritone saxophone, tenor saxophone, alto saxophone, clarinet, bass clarinet, flute, percussion
James Jacson - clarinet, oboe, flute
Danny Davis - alto saxophone, flute, percussion
Absholom ben Shlomo - alto saxophone, flute, clarinet
Danny Thompson - baritone saxophone, alto saxophone, flute
Alan Silva - violin, cello, bass
Alejandro Blake Fearon - bass
Rashid Salim IV - vibraphone, drums
Nimrod Hunt - hand drums
John Goldsmith - drums, tympani
Lex Humphries - drums, percussion
June Tyson - vocals
Gloristeena Knight - dance, vocals
Verta Grosvenor - space goddess, dance, vocals

 本作と同じ『Nuits de la Fondation Maeght』(マグー美術館の夜)と題されたライヴ・アルバムはセシル・テイラーにもアルバート・アイラーにもあって、いずれもフランスのShanderレーベルが原盤です。セシル・テイラーは3枚組LPで邦題は『セシル・テイラー(Aの内幕)』、アルバート・アイラーは『ラスト・レコーディングVol.1』『Vol.2』という邦題で分売され、サン・ラは『Volume 1』と『2』のうち『1』のみが邦題『宇宙探求』として発売された、と資料にあります。Shanderは原盤権が不明になっているらしく90年代にはテイラー、アイラー、サン・ラともJAZZ VIEWというパブリック・ドメイン・レーベルから観光写真をあしらったLP起こしのCDで出ていました。2000年代にはアイラー盤は遺族が版権を再登録して正規CDが出ましたが、テイラー盤とサン・ラ盤の『Nuits de la Fondation Maeght』はJAZZ VIEW盤が廃盤になっても未だに正規CD化されていません(海賊盤のみ)。ボロボロの演奏のアイラー盤が最晩年の録音ゆえに知名度が高く、絶頂期の壮絶演奏が聴けるテイラーの傑作盤とサン・ラ盤がいまだに海賊盤でしかCD化されていないのは大きな損失でしょう。
 ジャズでも前衛の部類に入る彼らのライヴ収録が美術館で行われたのは何ら芸術的関連などではなく、非商業的コンサートとして免税になるというメリットがあったからと思われます。チケット代ばかりでなく飲食物販売、レコード物販にも控除があったでしょう。インディー・レーベルのShanderにはライヴ・アルバム制作には当然チケット売り上げが納税控除になれば大助かりで、ただしきちんとした原盤権契約をアーティストと結んでいなかったのが後々祟ることになります。再発売して見込める売り上げを考えると、原盤権の再登録料は安いものではありません。アイラー盤は人気作だったからともかくとして、テイラー盤とサン・ラ盤はShanderさえも版権を主張できないようです。

(Original Shander "Nuits de la Fondation Maeght Volume 2" LP Liner Cover)

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 サン・ラの70年代録音のご紹介は今回で7作目ですが、録音順で今回のアルバムはまだ1970年8月です。前回までのアルバムが60年代録音を含んでいることにもよりますし、今回のライヴ・アルバムはサン・ラにしては珍しく録音年月日が特定できる、純然たる1970年8月録音です。前回ご紹介した、やはりフランスのBYGレーベルからの『The Solar-Myth Approach Vol.1 & 2』はライヴ・アルバムに見せかけたようなジャケットでサン・ラの未発表スタジオ録音曲棚ざらえ盤でしたが、おそらく同作のジャケットはこの『Nuits de la Fondation Maeght』のフランス公演のステージ・ショットを流用したものと思われるのです。
 前作は『Vol.1』と『Vol.2』のうち数曲しかリンクが引けませんでした。今回は何とか『Volume 2』は全曲ご紹介できますが『Volume 1』からは断片的にしかご紹介できません。『Volume 1』はA面3曲・B面1曲と『Volume 2』より過激な構成をとっており、1981年にアヴァンギャルド/ポスト・パンク・ロックのレーベルRecommendedからも再発売されました。初発売の1971年には日本では『Volume 1』だけ単独アルバムとして発売されたことでも、どうもサン・ラ盤『Nuits de la Fondation Maeght』は『Volume 1』と『Volume 2』は原盤権が別々のようなのです。『Volume 1』収録曲データを参考までに載せておきましょう。

(Japanese RCA "Nuits de la Fondation Maeght Volume 1" LP Front Cover)

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Sun Ra - Nuits de la Fondation Maeght Volume 1 (Shander, 1971)
Recorded at Saint Paul de Venice, France, August 5, 1970
Released by Shander Disques SR-10.001, France(1971), Recommended RR11, UK(1981)
All Written & Arranged by Sun Ra except as indicated.
A1. Enlightment (Sun Ra, Hobart Dotson) : http://youtu.be/4d1xaoyoZ_4 - 2:56
A2. The Star Gazers - 3:08
A3. Shadow World - 13:20
B1. The Cosmic Explorer (Part 3 - Moog Solo : http://youtu.be/MKYtJ3QpVKg - 5:53) - 19:45
 さて、本作はアーケストラ70年代のライヴ活動快進撃のもっとも早い記録として絶大な価値があります。フル・ライヴ・アルバムとしては1966年録音の『Nothing Is...』に次ぐものですが、何しろ1970年のヨーロッパ・ツアーは驚愕の18人編成(サックス6人、ベース2人、ヴォーカル3人、ドラムス4人!)の上サン・ラがシンセサイザー弾きまくりです。ただ前述の通り本作は正規盤CDがありませんので、お勧めできるのは本作から2か月後の1970年10月のドイツ公演を収めた『It's After the End of the World』(MPS, 1970)が邦題『世紀の終焉』として日本盤もあり、定評のあるサン・ラのライヴ・アルバムの傑作です。ただしそちらを聴くと『Nuits de la Fondation Maeght Volume』も聴きたくなるのが痛し痒しでしょうか。