人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

レスター・ヤング Lester Young Trio - 身も心も Body and Soul (Philo, 1942)

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レスター・ヤング・トリオ Lester Young Trio - 身も心も Body and Soul (Johnny Green with Ed Heyman, Robert Sauer & Frank Eyton) (rec.Philo'42, from the album "Lester Young Trio", Aladdin Records 506, 1953) : https://youtu.be/tBfqqbm50uw - 5:08
Recorded in Los Angeles, July 15, 1942
[ Personnel ]
Lester Young (ts), Nat "King" Cole (piano), Red Callendar (b)

 この大スタンダード曲「身も心も (Body and Soul)」の出典については昨日、2月18日のジャズ名曲で触れましたので今回は各演奏について軽くご紹介していきたいと思います。この曲は1930年の発表即カヴァー・ヴァージョンの競作が相次ぎ、ジャズ・ヴァージョンとしてはルイ・アームストロング(トランペット)が'32年に、ベニー・グッドマン(クラリネット)が'35年にヒットさせていたのですが、一気にジャズ・バラードの定番曲になったのは'39年のコールマン・ホーキンスのテナーサックス・ヴァージョンでした。ホーキンス版の「Body and Soul」は器楽ジャズの表現力を向上させたばかりかサックスをトランペットやクラリネットをしのぐ花形楽器に押し上げたほどでした。ホーキンスより5歳若くホーキンスを追い上げる位置にいたテナー奏者、レスター・ヤングも「Body and Soul」を取り上げましたが、中編成ビッグバンドのホーキンスに対してピアノとベースだけをバックにしたレスターの演奏は改めて小編成バンドの魅力に目を向けさせるものでした。ホーキンスのヴァージョンからすぐにビリー・ホリデイが初録音した「Body and Soul」もジャズ・ヴォーカルがサキソフォンのようなソノリティに近づいた例に上げられます。

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Billie Holiday and Her Orchestra (rec.Vocalion'40, from the album "Golden Years", Columbia ‎Records C3L 21, 1962) : https://youtu.be/SsT3F51bMQM - 2:58
Recorded in New York City, February 29, 1940
[ Personnel ]
Billie Holiday (vo), Roy Eldridge (tp), Jimmy Powell & Carl Frye (as), Kermit Scott (ts), Sonny White (p), Lawrence "Larry" Lucie (g), Johnny Williams (b), Harold "Doc" West (ds)

 レスター・ヤングが「Body and Soul」を取り上げたのと同じ頃、ローカル・ビッグバンドの一員だった22歳のチャーリー・パーカー(アルトサックス)が私家録音したギター、ドラムスだけのトリオのレコード全4曲でも「Body and Soul」が演奏されており、ギターとドラムスはスウィング・ジャズのリズムでビートを刻んでいますが、パーカーの演奏はすでにレスター・ヤング以上に柔軟なビート感覚によってビ・バップ以降の演奏の萌芽を見せています。パーカーはこの年初めてニューヨークを訪れ、ディジー・ガレスピーセロニアス・モンクケニー・クラークベニー・グッドマン楽団員で夭逝のギタリストのチャーリー・クリスチャンらが始めていたビ・バップの斬新な小編成バンドの演奏に接することになります。

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Charlie Parker - Body and Soul (rec.Private Press'42, from the album "The Complete Birth Of The Bebop", Stash Records ‎ST-CD-535, 1991) : https://youtu.be/prbqc3C6968 - 3:44
Recorded at Vic Damon Studios, Kansas City, Kansas, September 1942
[ Personnel ]
Charlie Parker (as), Efferge Ware (g), Little Phil Phillips (ds)

 レスターのトリオのピアニストだったナット・キング・コールはレスターより10歳若くパーカーと同年輩で、後に歌手として成功しますが初期のうち自分のバンドではギタリストをフィーチャーして人気を博しました。ドラムスの新しい奏法は立ち遅れており、レスターのようにスムーズでリラックスした感覚を表現できるサックス奏者はまだ少なく、ピアニストとギタリストの方が先を行っていた事情がナット・キング・コール、またピアノの巨匠アート・テイタムの同時期のギター入りドラムレス・トリオ編成のヴァージョンからは感じられます。

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Nat "King" Cole Trio Featuring Oscar Moore - Body and Soul (from the album "The King Cole Trio", Capitol Records ‎A-8, Oct.1944) : https://youtu.be/xYn-VbgUyV8 - 3:18
Recorded in Hollywood, January 17, 1944
[ Personnel ]
Nat "King" Cole (p), Oscar Moore (el-g), Johnny Miller (b)

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Art Tatum Trio - Body and Soul (rec.Comet'44, from the album "Art Tatum Trio", Dial Records 206, 1950) : https://youtu.be/ualqYDat4_k - 4:45
Recorded in New York City, May 1, 1944
[ Personnel ]
Art Tatum (p), Tiny Grimes (el-g), Slam Stewart (b)

 ジャズのモダン化が成熟した頃には、同じギターでも表現力が飛躍的に高めることが可能になったのは、ピアノ、ベース、ドラムスからなるリズム・セクションが新しいジャズのビート感覚を会得し、よりスピーディーで弾力性に富んだリズムを打ち出せるようになったことが大きいでしょう。プレイヤー個々の力量は十分だったのにレスターやナット・キング・コールアート・テイタムのトリオがまだバンド自体のコンセプトを革新できなかったのと較べると、個々のプレイヤーの力量はもちろんとしてもビ・バップ以降のリズム・セクションの強化があってこそジャズ・ギターも極めつけとも言えるような次の演奏が生まれたと思えます。

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Wes Montgomery - Body and Soul (from the album "Movin' Along", Riverside Records ‎RLP-9342, 1960) : https://youtu.be/9RzB0k--Gyg - 7:22
Recorded in Los Angeles, California, October 12, 1960
[ Personnel ]
Wes Montgomery (el-g), James Clay (fl, ts), Victor Feldman (p), Sam Jones (b), Louis Hayes (ds)