人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

クラフトワーク Kraftwerk - ヨーロッパ特急 Trans-Europe Express (EMI / Capitol, 1977)

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クラフトワーク Kraftwerk - ヨーロッパ特急 Trans-Europe Express (EMI / Capitol, 1977) Full Album + 10 Bonus Tracks : https://youtu.be/i7i83yoQSo0
Recorded at Kling Klang Studio, Dusseldorf, Germany, 1976
Released by EMI / Capitol Records IC 064 82306, March 1977
Produced by Ralf Hutter & Florian Schneider
All Lyrics by Ralf Hutter, Florian Schneider & Emil Schult, All Compositions by Ralf Hutter & Florian Schneider
(Side One)
A1. Europe Endless (Europa Endlos) - 9:40
A2. The Hall of Mirrors (Spiegelsaal) - 7:56
A3. Showroom Dummies (Schaufensterpuppen) - 6:15
(Side Two)
B1. Trans-Europe Express (Trans Europa Express) - 6:52
B2. Metal on Metal (Metall auf Metall) - 2:11
B3. Abzug - 4:53
B4. Franz Schubert - 4:26
B5. Endless Endless (Endlos Endlos) - 0:55
[ Kraftwerk ]
Ralf Hutter - voice, synthesizer, orchestron, synthanorma-sequenzer, electronics, producer
Florian Schneider - voice, vocoder, votrax, synthesizer, electronics, producer
Karl Bartos - electronic percussion
Wolfgang Flur - electronic percussion

(Original German Kling Klang "Trans-Europe Express" LP Front / Liner Cover & Side One Label)

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 クラフトワークが世界進出したのは前々作『アウトバーン (Autobahn)』'74ですが、前作『放射能 (Radio-Activity)』'75ともどもまだ西ドイツの実験的電子音楽グループという認知にとどまっていてその限りでのノヴェルティ・ヒットだったのは『放射能』が新し物好きのフランス以外では『アウトバーン』ほどのヒットにならなかったことでも現れていると思います。『放射能』と同年にクラウス・シュルツェの第5作『タイムウィンド (Timewind)』'75がもっともヒットした国もフランスでした。その購買者層はほぼ重なっていたでしょうし、フランスではちょっと遅れたものを新しがってありがたがるところがある。ジッドやサルトルからボリス・ヴィアンゴダール(ゴダールはスイス系フランス人ですが)まで具体例は煩瑣になるので止めますが、それがかえって良い方向に働くこともあるので、クラフトワークやシュルツェの場合はフランスでのヒットが過渡期的な時期を次へつないでくれたところもあるでしょう。シュルツェがすっきりした次作『ムーンドーン (Moondawn)』'76に進むことができたように、クラフトワークの本作『ヨーロッパ特急 (Trans-Europe Express)』'77もそれまでのクラフトワークのポップな部分を抽出して磨き上げたような、『アウトバーン』の一発屋とは呼ばせない大出世作になりました。
 すでに『アウトバーン』以前からブライアン・イーノクラフトワークに注目していたためイーノの薦めでクラフトワークを聴いたデイヴィッド・ボウイが(コンサートの最前列3列を買い占めたりしたそうです)アルバム『Station To Station』'76.1ではすでに前作『Young American』'75.3のソウル=ディスコ・スタイルをヨーロッパ風に発展させた作風を示し、ボウイはイーノをブレインに迎えてベルリン録音の『Low』'77.1、『Heroes』'77.10でテクノ・スタイルに手を染めます。この2作はボウイがプロデュースしたイギー・ポップの本格的なソロ・デビュー作『The Idiot』'77.3と『Lust For Life』'77.9と平行制作されました。ボウイがパンクロック/ニュー・ウェイヴの新世代の台頭に一歩先駆けたのもこれらのアルバムがあったからでした。『ヨーロッパ特急』のアルバム・タイトル曲ではイギーを連れたボウイに表敬訪問を受けた旨の歌詞がありますが、これはもちろんクラフトワーク自身が自分たちのスタイルのオリジネイターであることを自負する大胆な表明です。しかしタイトル曲がのちのアフリカ・バンバータのヒップホップ・ヒット「Planet Rock」'82にサンプル使用され黒人音楽シーンにも逆影響を与えていたことが実証されるとはこの時点ではクラフトワーク本人たちですら予想はつかなかったか、いや、すでに'70年代のうちにイタリア出身の音楽プロデューサー、ジョルジオ・モロダーや、アメリカの大物ジャズマン、サン・ラによってディスコとテクノの融合は始まっていました。クラフトワークの次作『人間解体 (The Man-Machine)』'78がさらに徹底したテクノ作品になったのも本作の後に来る流行を予兆していたと思われるのです。