人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ジョン・コルトレーン John Coltrane - ロニーズ・ラメント Lonnie's Lament (Impulse!, 1964)

イメージ 1

ジョン・コルトレーン John Coltrane - ロニーズ・ラメント Lonnie's Lament (John Coltrane) (Impulse!, 1964) : https://youtu.be/e8x-2-Zq3FQ - 11:54
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey, April 27, 1964
Released by ABC/Impulse! Records as the album "Crescent", Impulse! A-66, July 1964
[ John Coltrane Quartet ]
John Coltrane - tenor saxophone, McCoy Tyner - piano, Jimmy Garrison - bass, Elvin Jones - drums

 アルバム・タイトル曲がA1、「ワイズ・ワン」がA2と沈鬱に進んだアルバム『クレッセント』はベッシー・スミスに捧げた軽快なブルース「ベッシーズ・ブルース」をA3にA面を終えますが、B面はまたもや沈鬱なバラード「ロニーズ・ラメント」で始まり、瞑想的なクロージング曲「ザ・ドラム・シング」で終わります。「ロニーズ・ラメント」はレギュラー・メンバー制のコルトレーン・カルテットだからこそできた構成に凝った演奏で、全員揃ったテーマの演奏が終わるとピアノ、ベース、ドラムスだけのトリオ演奏が数コーラス続き、コルトレーンのテナーは4分半すぎにソロを取り始めますがソロ後半ではピアノのブロック・コードによるバッキングをテナーが彩るような演奏でテナーはピアノに再び主役を譲り、8分半過ぎからピアノはエンディングに向かって一旦演奏はフェイド・アウトするような中断をするかと思えば、9分にさしかかる直前からベースの無伴奏ソロが始まり、再び全員がテーマを奏でて終わる、という構成です。
 コルトレーンは「マイ・フェヴァリット・シングス」'60以降テーマあとピアノに先にソロをたっぷりとらせる、曲によってはピアノ・トリオで前テーマ~ソロまでおえたあとやおらテナーが出てくる、などさまざまなヴァリエーションの構成を試しましたが、これはコルトレーンマイルス・デイヴィスのバンドから独立する'60年以降に始まったことではなく、プレスティッジ・レーベルのオールスター・セッションやマイルスのバンドでさまざまなソロ・オーダーの録音に参加し、またベーシストのジミー・ギャリソンのレギュラー参加こそ遅れましたがドラムスのエルヴィン・ジョーンズ、ピアノのマッコイ・タイナーは独立してすぐメンバーに揃い、何よりエルヴィンのリズム応用力がカルテットのアンサンブルに磐石の融通性をもたらしていたのがコルトレーン・カルテットを一気に黒人ジャズのトップ・グループに押し上げました。これはコルトレーンだけでもエルヴィンだけでもできなかったことで、フリー・ジャズ化したあとの方向性やセカンド・ドラマーの加入によるツイン・ドラムスを試したコルトレーンにエルヴィンが激しく反撥したのはそれまでの貢献からすれば当然だったでしょう。『クレッセント』でもクロージング曲はエルヴィンのドラムスが主役でテナー、ピアノ、ベースはドラムスの引き立て役にまわる「ザ・ドラム・シング」ですが、1年半後にはエルヴィンはついに自分からバンドを脱退してしまう。「ロニーズ・ラメント」のような曲の進行はエルヴィンのドラムスが支えていたからこそ実現できたので、こうした繊細なリズム・アレンジは'65年度にはコルトレーン・カルテットから失われていき、エルヴィンの脱退に至ります。アルバム『クレッセント』収録のバラード曲がこうした作風の頂点かつ最後の輝きで、次作以降コルトレーンが向かうのは『クレッセント』からは予想もつかない方向だっただけに、このアルバムはそれまでのコルトレーンのキャリアを集約したような観があるのです。