人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アルバート・アイラー Albert Ayler - トゥルース・イズ・マーチング・イン Truth Is Marching In (Impulse!, 1967)

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アルバート・アイラー Albert Ayler - トゥルース・イズ・マーチング・イン Truth Is Marching In (Albert Ayler) (Impulse!, 1967) : https://youtu.be/utVcl8f2-XY - 12:43
Recorded live at Village Vanguard, December 18, 1966
Released by ABC/impulse! Records as the album "Albert Ayler in Greenwich Village", Impulse! AS9155, 1967
Also Reissued GRP/Impulse! Records as the 2CD album "Live in Greenwich Village: the Complete Impulse Recordings", Impulse! ‎ IMPD-2-273, 1998

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[ Personnel ]
Albert Ayler - tenor saxophone, Donald Ayler - trumpet, Michel Sampson - violin, Bill Folwell - bass, Henry Grimes - bass, Beaver Harris - drums

 '62年にスウェーデンの現地ジャズ・マニアの私家盤現地録音ライヴ・アルバムでデビューした軍楽隊除隊兵のテナーサックス奏者、アルバート・アイラー(1936-1970)は'63年に帰国し、同年発売されたデンマークでの放送用録音のスタジオ・ライヴ・アルバム『私の名はアルバート・アイラー』がアメリカでも輸入発売されるとともに、'59年にニューヨーク・デビューしていた西海岸出身のアルトサックス奏者、オーネット・コールマン(1930-2015)に続いて一躍ジョン・コルトレーン(1926-1967)、ソニー・ロリンズジャッキー・マクリーンら第1線の主流サックス奏者に注目される存在になりました。特にジョン・コルトレーンはオーネットを新たな師、アイラーを自分の後継者と見なし、コルトレーンを看板ジャズマンかつ監修者にして創設されたインパルス!レコーズへの発言権によってかねてから親交のあった先輩テナー奏者のユーゼフ・ラティーフ、新進テナー奏者のアーチー・シェップ、新進アルトサックス奏者のマリオン・ブラウンらに続いて、他社との契約満了を待ってオーネット・コールマンアルバート・アイラーをインパルス!・レーベルに迎えましたが、オーネットとアイラーがようやくインパルス!・レーベルに移る条件の整った'66年後半にはすでに肝臓癌が悪化していました。コルトレーンは'67年にはほとんどライヴ活動もできなくなっていましたが、5月まで録音やライヴ活動を続けるも、7月に倒れ入院2日後の同月17日に急逝しました。オーネット・コールマンアルバート・アイラーのインパルス移籍第1弾アルバムはコルトレーン逝去と入れ違いにリリースされ、コルトレーンは晩年すでに遺言書で葬儀の演奏にオーネットとアイラーを指名しており、両者はともに自分のバンドを率いてコルトレーンの葬儀に教会の壇上で追悼演奏を行いました。この時アイラーが演奏したのがインパルス!移籍第1弾アルバムからの2曲に新曲を加えたメドレーで、移籍第1弾アルバム『グリニッジ・ヴィレッジのアルバート・アイラー』録音時にはコルトレーン存命でしたからコルトレーンも録音すぐに監修者として音源を聴いたはずです。コルトレーンの直接の師はディジー・ガレスピーマイルス・デイヴィスセロニアス・モンクでしたが、マイルスやモンクは原則無報酬の追悼演奏を頼めるような柄ではなく、気さくなディジーでも頼むには大物すぎたでしょう。
 自分の葬儀に追悼演奏を頼むとは列席者に示すオーネットやアイラーの音楽への全幅の親愛であり、コルトレーンが本当に心から彼らの音楽で魂を送り出してほしいと願っていたことでもあります。この曲「トゥルース・イズ・マーチング・イン」はもちろん黒人ゴスペルでディキシーランド・ジャズ曲の「聖者の行進(When The Saints Go Marching In)」のもじりですが、コルトレーンエリック・ドルフィーの急逝後、アイラーのアルバム『スピリチュアル・ユニティ』録音後にアイラーと同様のコンセプトを持つアルバム『至上の愛』に向かい、晩年まで急進的な姿勢を崩さなかったのは常にオーネットやアイラーと競う気持があったからでしょう。オーネットの追悼演奏は未発掘ですがアイラーのコルトレーンの葬儀での追悼演奏は2004年発売の10枚組未発表発掘音源CDボックスで明らかになり大変な話題を呼びました。ぜひお聴き較べください。

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Albert Ayler Quartet - Love Cry/Truth Is Marching In/Our Prayer (Albert Ayler/Albert Ayler/Don Ayler) (Revenant, 2004) : https://youtu.be/wO9UCV5APPA - 6:26
Recorded live at St. Peter's Lutheran Church, New York City, July 27, 1967
Released by Revenant Records from Disc Six-Tr.4 as the 10CD Box "Holy Ghost: Rare & Unissued Recordings (1962–70)", Revenant RVN 213, October 9, 2004
[ Personnel ]
Albert Ayler - tenor saxophone, Donald Ayler - trumpet, Richard Davis - bass, Milford Graves - percussion