人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ヴァーンフリート Wahnfried ‎- トランス・アピール Trance Appeal (Metronome, 1996)

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ヴァーンフリート Wahnfried ‎- トランス・アピール Trance Appeal (Metronome, 1996) Full Album : http://www.youtube.com/watch?v=kEufc5u2LrA&list=OLAK5uy_nGdh3cQ7IkFTAJuz92qnyKHGkQjVGPVnQ
Recorded at Klaus Schulze Studio, Hambuhren, July to August 1995
Released by Metronome Music GmbH, Metronome ‎- 531 683-2, May 7, 1996
All tracks composed by Klaus Schulze and Jorg Schaaf.
(Tracklist)
1. Suspense - 3:40
2. Bizarre - 5:43
3. Rubbish - 4:06
4. Angel Heart - 8:50
5. So What? - 3:43
6. Towarisch - 4:06
7. Das Madchen Mag Es - 2:20
8. A Chilly Fiesta - 9:34
9. Esprit Sans Frontieres - 8:37
10. Psychedelic Clubbing - 9:00
11. Le Sleep Des Animaux - 3:02
[ Personnel ]
Klaus Schulze - electronics, keyboards
Jorg Schaaf - computer programming, keyboards

(Original Metronome "Trance Appeal" CD Liner Cover, Inner Sheet & CD Label)

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 聴き始めるとしばらくはリズム・トラックだけのシークエンスが続き、テクノからドラムン・ベースの潮流に走ったかと唖然としてしまう本作ですが、シームレスの楽曲が進むにつれて'70年代の『タイムウィンド』'75や『蜃気楼(ミラージュ)』'78あたりのシュルツェの楽想が次々と登場してくるという仕掛けでヴァーンフリート名義アルバム中ひさびさの快作になったのがこの『トランス・アピール』です。この'70年代回帰を最新のサウンド処理に乗せる手法はクラウス・シュルツェのソロ名義の『In Blue』'95、『Are You Sequenced?』'96、『Dosburg Online』'97でも見られるシュルツェ'90年代後期の手法で、その意味ではバンド編成のセッションから始まったリヒャルト・ヴァーンフリート名義のアルバムはずいぶん性格を変えたと思わないではいられない。その趣きは本作ではソロ名義作ではもっとアルバム全体に力作感があるのを、テクノやトランス、ドラムン・ベースといった現代型エレクトロニクス・ミュージックの型と近いところでシュルツェの音楽を展開してみる、といった実験的な試み、制作パートナーを迎えてソロ名義作よりは軽くアルバムをまとめてみる余技的な楽しみにヴァーンフリート・プロジェクトの性格が変化したとも取れますが、ソロ名義作と変わらないじゃないかという腑に落ちない感じも数作重ねてくるごとにシュルツェがどのあたりでソロ名義作とヴァーンフリート名義作を分けているかも見えてきた感じがし、ソロ名義の会心作『In Blue』がこの時期の決定打としてあるだけに本作もあえてヴァーンフリート名義作なのが納得のいくものになっているのが大きい感じがします。次作『Drums 'n' Balls (The Gancha Dub)』'97がヴァーンフリート名義最終作になり、同年がシュルツェが50歳を迎えソロ・デビュー25周年で、新作の20世紀内最後の発表年でもあったこともあり、今後この名義が使われることはないと予想されるだけに、余技的とはいえ完成度の高いアルバムで有終の美を飾る意識が本作には芽生えている感じもあって、このさりげないアルバムはちょっと肩の力を抜いたシュルツェの底力が堪能できる好作になっています。