人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

R・ブロス+K・シュルツェ Rainer Bloss + Klaus Schulze - ドライヴ・イン Drive Inn (Inteam, 1984)

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R・ブロス+K・シュルツェ Rainer Bloss + Klaus Schulze - ドライヴ・イン Drive Inn (Inteam, 1984) Full Album : http://www.youtube.com/watch?v=tyNQVei8qwU&list=OLAK5uy_kTGMgaQiC0LOXsGo5PJpXSlahdz-aESms
Recorded at INTEAM Studio, Hambuhren, September 1983
Released by Metronome Musik GmbH/Inteam GmbH, ID 20.002, March 1984
Composed and Performed by Klaus Schulze and Rainer Bloss
(Side 1)
A1. Drive Inn - 3:42
A2. Sightseeing - 6:24
A3. Truckin' - 4:54
A4. Highway - 4:45
(Side 2)
B1. Racing - 6:00
B2. Road Clear - 11:11
B3. Drive Out - 3:00
[ Personnel ]
Klaus Schulze - electronics
Rainer Bloss - piano, keyboards
Michael Garvens - percussion (on B1)

(Original Inteam "Drive Inn" LP Liner Cover & Side 1/2 Label)

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 本作についてクラウス・シュルツェは短く「"Easy listening" - but sounds quite nice.」とコメントし、「Remark : There exists an album called Drive Inn II, but despite the fact that Klaus Schulze's name is put on the cover, it is a Rainer Bloss solo project. Furthermore, there exists a Drive Inn III by Rainer Bloss. Klaus Schulze has nothing to do with it or any other of Rainer Bloss' solo recordings.」と注記しています。アルバム『ドライヴ・インII』'86もライナー・ブロス(1946-2015)とシュルツェの共作名義でリリースされたが実際はブロスの単独作品であり、さらにブロス名義でリリースされた『ドライヴ・インIII』'98もシュルツェは参加していない、とのことですが、『ドライヴ・インII』はシュルツェのInteamレーベルからの作品であり、『ドライヴ・インIII』もシュルツェと関わりのあったThunderboltレーベルからの作品ですからブロスからシュルツェに『ドライヴ・イン』の続編制作の打診または了解は取ったものと思われ、シュルツェ自身はこのシリーズの続編参加の興味はなかったとしてもブロスに続編制作の了解はし、『ドライヴ・インII』については共作名義も貸したということで、シュルツェとブロスの共演期間はレコーディング上では'82年~'86年に残されているきりですし、画家エルンスト・フックスを主役に迎えたブロスとのコラボレーションによる前作『アフリーカ』をいかにシュルツェが嫌っているかは前回ご紹介した通りですが、シュルツェ'80年代前半の名盤『オーディンティティー』'83、『ポーランド・ライヴ』'83はライナー・ブロスの貢献が非常に大きいアルバムです。ブロスは電子音楽畑の出自のミュージシャンとされますがシュルツェのようにサイケデリック・ロックのドラマーからエレクトロニクス奏者になった変則的なプレイヤーではなく『オーディンティティー』や『ポーランド・ライヴ』を聴いてもピアノやオルガンによるジャズ系のインプロヴィゼーションを習得した演奏なのがシュルツェと対照をなしており、同じエレクトロニクス音楽でもだいぶ異なる素養の音楽家だったのをうかがわせます。シュルツェがブロスと組んだのもシュルツェ自身にはないセンスとプレイヤーとしての確かな腕前を認めてのことでしょう。
 この『ドライヴ・イン』はシュルツェが言うようにイージー・リスニング的なドライヴ・ミュージックであり、楽曲も短く、いわばブロス&シュルツェ版『アウトバーン』といった趣きのアルバムです。シュルツェのファンにはあまり良く言われていないアルバムであり、オリジナル盤以来名義もジャケットにはクラウス・シュルツェ&ライナー・ブロスとしてシュルツェの名前を先にしているプレスばかりになるのはシュルツェの名義を先にした方が売れるから、という商業的事情が察せられます。本作自体はシュルツェのアルバムに重厚さを求めるリスナーでなければこういう路線もありかな、と快適に聴ける一種のトリップ・ミュージックとしてなかなかの好作であり、シュルツェが「"Easy listening" - but sounds quite nice.」とそれなりの自信を示しているのも納得のいくアルバムです。ただし本作がシュルツェのファンに受けが良くないのはライナー・ブロスとシュルツェの相性の問題で、ブロスのリーダー作にシュルツェが共作したとすると、ブロスというのはシュルツェとはあまり音楽的感性において共通する指向性を持たないミュージシャンなのではないか、と思われてくることです。シュルツェのアルバムである『オーディンティティー』や『ポーランド・ライヴ』ではそうした疑問は起こりませんでしたし、シュルツェがおそらくエルンスト・フックスのヴォーカルと歌詞ゆえに嫌悪する『アフリーカ』ですら音楽的にはシュルツェがリードしたのを感じさせるものでした。それらに較べると本作はあまりにシュルツェ参加作で共作名義にしては音楽性が軽く、これをブロスが主役のアルバムと考えるとシュルツェとはずいぶん違う資質のミュージシャンではないか、と疑問を呈するファンもかつては多かった、ということですが、のちに未発表音源の大量リリースもするようになるシュルツェの膨大な作品群にあってはこういう軽いセッション作があるのも面白いのではないでしょうか。