人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ジャニス・ジョプリン(2)

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ジャニスの一般的イメージは「愛と歌に生きた魂のロック・シンガー」「夭逝したロックの女王」といったところだろう。「「サマータイム」すごいですよね。死にそうな声で。あの後すぐ死ぬんでしょう?」「あれは気力体力充実してたデビュー直後の録音だよ」「ええっー?」
没後20年たって伝記研究も進み、結局ジャニスのキャリア上の試行錯誤は生前から企画が進行していた伝記・資料集「ジャニス」(デイヴィッド・ボルトン、原著71年・翻訳73年晶文社)と75年製作のライヴ映画「ジャニス」でほぼ網羅されていることが明らかになった。
新しい取材・研究成果としてはジャニスは故郷の家族に実に筆まめで、手紙の朗読を軸にした伝記ミュージカル「Love,Janis」(94年)がロングラン・ヒットしていることで、伝説化されたジャニス像ではなく、単身上京して歌手の道をめざし、やがて成功をおさめると共に充足感に乏しい私生活に陥っていくいきさつをジャニス自身の手紙から物語っていく誠実で虚飾のない作品になった。
90年代以降新しい(本来の)ジャニス像が描かれるようになったのは新しいタイプの女性ロック・ミュージシャンの台頭が大きい。キム・ゴードン、P.J.ハーヴェイ、コートニー・ラヴといった人たちだ。早い話それまでの女性ロック・ミュージシャンは男性バンドやプロデューサーの主導の下に創作を制限され、例外はオノ・ヨーコやニコ、ジョニ・ミッチェル、ジョイ・オブ・クッキングなど僅かなものだった。どんな優れた才能でもロックの世界では女性はリーダーになれない。そんな環境で、最終作「パール」で遂にバンド・リーダーの座を認めさせ傑作をものしたのがジャニス・ジョプリンだった。

ジャニス生前のアルバムは少ない。ここに挙げたのは没後の発掘録音も含めて全10作、このうちデビューから2作はビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニーという無名バンドのリード・ヴォーカリストとしての録音でソロになってからは2作。生前に製作されたのはそれだけで、後の6作は未発表録音のアンソロジー。これでも少ない方だ。ジミ・ヘンドリックスなど100枚以上出ている。
当時(今でも)ジャニスがどれだけテキサスの田舎出の際もの女性歌手とレコード業界のVlPから見られていたか、ジョン・サイモン(プロデューサー)の90年代の発言からでもわかる。
(次回完結)