人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

映画監督・吉田喜重

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吉田喜重大島渚篠田正浩続いて売り出された「松竹ヌーヴェルバーグ」第三の監督ですが、処女作「ろくでなし」から一筋縄ではいかない作風と凝った映像で賛否両論のいちばん激しい人でした。結局この3人は仕事を干されていき、円満退社の形で独立プロダクションを設立して最初は松竹、後にはATGの配給で作品を発表することになります。
この3人の監督は松竹時代にスター女優と結婚し、独立後も奥さんを主演女優に起用する特権がありました。吉田喜重の場合は名作「秋津温泉」で初顔合わせし、すでに百本以上の出演作のある岡田芙美子でした。
吉田監督作品は単独でもDVD化されていますが、年代順に4つのボックス・セット「吉田喜重全集」としてもまとめられています。収録作品を挙げてみます。

1。[60-64]新しい波
●ろくでなし(1960)
●血は渇いてる(1960)
●甘い夜の果て(1961)
●秋津温泉(1962)
●嵐を呼ぶ十八人(1963)
●日本脱出(1964)
(以上松竹制作・配給)

●水で書かれた物語(1965)
(現代映画社制作・日活配給)

2.[65-68]反メロドラマ
●女のみづうみ(1966)
●情炎(1967)
炎と女(1967)
樹氷のよろめき(1968)
(以上現代映画社制作・松竹配給)

3.[68-73]性と政治の季節
●さらば夏の光(1968)
●エロス+虐殺(1969)
●煉獄エロイカ(1970)
●告白的女優論(1971)
戒厳令(1973)
(以上現代映画社制作・ATG配給)

4.[86-03]炎を映す水
人間の約束(1986)
嵐が丘(1988)
●鏡の女たち(2003)

吉田監督のオリジナル・シナリオは理詰めの上に説明的な台詞もシーンもなく、ともすれば生硬な映画になりかねないのですが、監督としての指導力に長けているのと「理詰めの抒情」を描ける資質があるのでしょう。それは大正時代のアナーキスト大杉栄伊藤野枝の恋愛を考証した2時間45分の大作(ディレクターズ・カット復元版は3時間35分)「エロス+虐殺」だけでもおわかりいただけるかと思います。