人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ザ・ムーヴ

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今回はイギリスの60年代バンド。ザ・ムーヴ。とにかく才気煥発で、ビーチ・ボーイズビートルズの弾んだポップ・センスを純化したような音楽性では随一の存在だった。別の言葉で言えば、能天気といってもあながち的はずれではない。ボーイズやビートルズには透明な悲しみや儚さがあったが、平均年齢19歳でデビューしたザ・ムーヴはただただキャッチーでポップなバンドだった(ボーイズやビートルズはロックが逆境の時期に一発賭けに出てきたのだ。気合が違う)。
また、アメリカではロックは貧困白人層のためのブルースであり、エルヴィスの失速あたりから本来のブルース性を失って東海岸ではポップ、西海岸ではサーフ・ミュージックに形を変えてかろうじて生き延びていた、という歴史があった。そこに「プロ・ミュージシャンではなく本物のサーファーの学生バンド」としてデビューしたのがビーチ・ボーイズだった。
この場合重要なのは「アマチュア=既成の音楽観にとらわれない」ということで、メンバー5人中サーファーはひとりだけだったことは本質的な問題ではない。ロサンジェルスやニューヨーク、シカゴといった大都市ほど音楽家組合の倫理規定は厳重だが、学生バンド上がりの無謀さでセックス、ドラッグ&ロックン・ロールの開祖となったのもビーチ・ボーイズの業績といえる。
この調子でビートルズストーンズザ・バーズの背景を書いていくとキリがないが、早い話、ザ・ムーヴは先人たちが開拓した世界をさらに広げたり掘り下げたりするタイプではなく、海辺のヤドカリのように気分次第で殻を替えるような音楽活動をしていた。デビュー曲は1966年12月でNo.1ヒット。ジミ・ヘンドリックスのデビュー曲「ヘイ・ジョー」と同時期。彼らは以後10曲近いヒット曲があるが、CDを買って愛聴している人しか知らない。ジミの音楽はジミを知らない人まで浸透している。その違いがある。
掲載図版は、上から、

●「ザ・ムーヴ」'The Move'1968
●「シャザム」'Shazam'1970
●「メッセージ・フロム・ザ・カントリー」'Message From The Country'1971

これが1、2、4作目で、3作目に「ルッキング・オン」'Looking On'1970がある。1、2作目は傑作だが、彼らの場合は断然ベスト盤をお薦めします。