人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ボブ・ディラン『北国の少女』

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 今回の曲はアルバム「フリーホイーリン・ボブ・ディラン」'The Freewheelin' Bob Dylan'1963(上)に収録(後に「ナッシュヴィルスカイライン」'Nashville Skyline'1969で再録音=下)、原題'Girl From The North Country'。
 ボブ・ディラン(1941-)は最初、当時のニューヨークで最先端のフォーク歌手としてデビューした。ファースト・アルバムは1962年、ディラン21歳。収録13曲中ディランの自作曲は2曲のみであとは伝承曲・古典曲、それが翌年のセカンド・アルバム「フイーホイーリン~」では自作11曲・古典2曲と逆転する。ディラン自身は元来自作自演のロック歌手志願だったのだが、ロカビリーの凋落からビートルズ出現のはざまの時期だったのでフォーク・ブームに鞍替えし、ジョーン・バエズやピーター・ポール&マリーに楽曲提供して一躍時の人になったのだ。このアルバム収録の『風に吹かれて』がディランの作詞・作曲家としての名声を決定した最初の里程標だった。当時の典型的なフォーク・スタイルがこの叙情的な曲にはよく表れている。

『北国の少女』

ああ、もしきみが国境に厳しい風が吹く
北国の祭りを訪ねているなら
そこに住む人にぼくを思い出させてほしい
彼女はかつてはぼくの恋人だったんだ

ああ、もしきみが川が凍り夏が終ったとき
雪の嵐のなかを旅しているなら
どうか確かめてほしい、彼女が唸る風から身を守る
暖かいコートを来ているかどうかを

どうか見てきてほしい、彼女が長い髪を
胸元までたっぷりとあふれさせているかを
どうか見てきてほしい、彼女の長い髪を
それがいちばん素敵な彼女の姿だったのだから

彼女はぼくを今でも思い出すだろうか
ぼくは何度となく祈った
暗闇のなかでも、そして
昼の明るさの中でも

だからもしきみが国境に厳しい風が吹く
北国の祭りを訪ねているなら
そこに住む人にぼくを思い出させてほしい
彼女はかつてぼくの恋人だったんだ
 (前記アルバムより)

 当時の典型的なフォーク・スタイルとは主にイギリスの古い民謡、アメリカの戦前ブルースの改作だった。この曲はサイモン&ガーファンクル「スカボロー・フェア」と同じ民謡の改作と指摘されている。