掲載ジャケットで今日のネタギレ感はおわかりいただけると思う。アーティスト名がデザインされていませんね。このバンドは72年のデビュー以来リーダーの卓越した作曲力でヒット連発(甲斐よしひろ曰く「日本のレイ・デイヴィス」)、70年代だけでも16枚のアルバムを発表している。「日本」は75年12月1日発売の8作目で、ジャケットから予想つくように風刺的要素が強い(が、デビュー以来そういう曲はアルバム中にはアクセントとして入っていた。元々の路線でもあったのだ)。70年代にメジャー・レーベルから16作というのはまがりなりにもロック・バンドとしては最大の成功と言える。誰でしょうか?栄ちゃんでも陽水でもありませんよ。アリス?オフコース?だんだん近づいてきましたねえ。
チューリップです。「魔法の黄色い靴」の、「心の旅」の、「サボテンの花」「青春の影」「虹とスニーカーの頃」のチューリップです。隅におけないセンスだなあ。なるほどレイ・デイヴィス(キンクス)ね。ファンにはこのジャケットは不評だそうです。
梅干し1個。
グリル・マーカス「ミステリー・トレイン~ロック音楽にみるアメリカ像」で読んだブルース系トラッドを思い出した。「黒人男がひとりレストランにやってきて、メニューの隅から隅まで見て、財布と相談して決めた。ミートボール1個。ウェイターがキッチンに大声で伝えた。ミートボール1個」。
マーカスの著書は初版が75年からミュージック・マガジンに訳載されたが、チューリップは博多でもフォーク・ロック系のライヴハウス「照和」出身で、甲斐バンド、ARB、モッズなどもここだ。
ソリッドなブルース・ベースのロックをやっていたサンハウスの系統にはシーナ&ロケッツ、ルースターズ、ザ・ロッカーズが生まれたが、ブルース研究書である(現代のロックにブルースの典拠を求めた)マーカスの著書を読み込んだのはサンハウスの柴山・鮎川両氏くらいだろうと思われる。それにサンハウスはマーカスの著書以前から「ミートボール1個」を「梅干し1個」に訳すような日本語ロックをやっていた(別れた妻は「ミートボール1個」の歌詞を読んで絶句していた。彼女もサンハウスは笑って聴いた)。
今日は本降り、強風。今午後6時少し前。中学生の長女が帰りに学童の次女を迎えに寄って帰路に就いている頃だ。無人の家へ。肩を濡らしながら。