正規に新作として制作・発表されたCANのアルバムは1969年から1979年までに10枚。前期5枚はドイツのCAN所有スタジオで、後期5枚はイギリスを拠点に通常のスタジオで制作された。違いははっきりと音楽に表れている。前期のCANは奇想天外な実験ロック集団で、なのに耳に馴染んでポップスのように聴きやすい、という理想的なバランス感覚を持っていた。それに較べると後期はヒットも出たしCANならではの変態ロックではあるが、メンバーのアジトで好き放題に録音された前期作品の奔放さにはかなわない。
正規アルバム10作に対して未発表曲・ライヴ音源が6作(2枚組や3枚組もある)、そのほとんどが前期から、というのもバンドの創造性が前期にこそあった証明だろう。以下は発表年順にご紹介。
画像1.「サウンドトラックス」1970-「これはカンの正式な第二作ではない。映画やテレビドラマへの提供曲を集めたものである」と但し書きがあるが、初代ヴォーカリストのマルコム・ムーニー、二代目のダモ鈴木のベスト・テイクが収録されており、映画「ノルウェイの森」にも本作の曲が多数使用された。現在では正式に第二作と認定。
画像2.「アンリミテッド・エディション」1976-渡英してすぐ、ドイツ時代のお蔵出しとして発表された2枚組。ここでもマルコム、ダモの二代に渡る秀逸な未発表曲満載で、現在は正式アルバムに算出。
画像3.「ディレイ1968」1981-バンド解散後にマルコム時代に絞り発掘されたもうひとつの「モンスター・ムーヴィ」1969として正規盤にカウント。ここまででもCANのお蔵入り音源は質・量ともに驚異的。
ここから先は90年代以降の発掘。
画像4.「BBCセッション」1995-地下流通音源がついに公式盤で出た。全曲がライヴ用即興曲で、ダモ鈴木大活躍の1曲目から40分を越える。
画像5.「ボックス・ライヴ1971-1977」1999-本、ヴィデオ、2枚組CDからなる集大成ボックスからCDのみ別売したもの。そして2011年の「タゴ・マゴ40周年記念盤」に充実したライヴがつき、近日発売の予告があったのが、
画像6.「ロスト・テープス」2012-全曲未発表、195分におよぶ3枚組CD。録音1968-1975。値段も輸入盤で2,500円と安い。嬉しいのだが、一気に3枚組はちょっと辛い。