人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

マーク・ボランから三枚

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マーク・ボラン(1947-1977)とはもちろんギンギンのグラム(厚化粧)・ロックで70年代初頭に大スターだった人で、キンクスザ・フーとも違った意味でイギリス人の趣味・嗜好を感じさせるギタリスト兼歌手。T.レックスとその前身ティラノザウルス・レックスはバンドを名乗るとはいえ実質的にボランのソロ・プロジェクトで、音楽的にはボランの歌とギターが中心。全盛期のサウンドは一度聴いたら忘れられないもので、分厚いコーラスとストリングスがシンプルを極めたロック・バンド演奏に異様に絡みつく物凄いものだった。20曲近いヒット曲を足掛け三年に渡って放った後は急激に凋落したのも音楽性を考えれば仕方ないといえる。もし同時代のバンドだったら確実に飽きる過剰さと単純さがある。

ボラン自身はパンク・ブームに鼓舞され、晩年は創作力も復調していたのが遺作「地下世界のダンディ」1977.3からも伺える。独自のファンク・ロックへの転換に成功している。だが「30歳までは生きないよ」という口癖が的中、同年九月30歳の誕生日の二週間前に夫人の運転する車の事故で死亡。生前のアルバムはティラノザウルス・レックスで5枚、T.レックスで10枚。没後発掘録音は50枚以上におよぶ。

そこでお薦めのアルバムは、ティラノでは最終作「ベアード・オブ・スターズ」1970(画像1)がいい。エレキ・ギターの弾き語りにパーカッションだけ、というシンプルな作りだが、それまでのティラノはアコースティック・ギターで音楽性も疑似エスニックのサイケデリック・フォークだった。このアルバムは以後にも以前にもない孤立した輝きがある。
T.レックスは「電気の武者」1971(画像2)と「グレイト・ヒッツ」1972(画像3)の2枚。全盛期のアルバムは「ザ・スライダー」1972、「タンクス」1973があるが、「グレイト・ヒッツ」は両作からの『メタル・グルー』『テレグラム・サム』『ボーン・トゥ・ブギ』をはじめアルバム未収録シングル『チルドレン・オブ・ザ・レヴォリューション』『20ス・センチュリー・ボーイ』など満載。
だが権利関係からT.レックスがブレイクしたアルバム「電気の武者」と収録ヒット曲『ゲット・イット・オン』は「グレイト・ヒッツ」未収録なので、この2枚は外せない。後追いだからか、30年聴いていて飽きません。