人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(43b)デイヴ・ブルーベック(p)

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Dave Brubeck(1920-2012,p)。
後のロック・バンドでは当たり前になった大学の学園祭ツアーがデイヴ・ブルーベック・カルテットに始まるというのはちょっとした盲点で、ジャズ・クラブのような敷居の高い場所に出入りできない大学生や青年層もこれなら気軽にジャズのライヴを見ることができる。オバーリン大学のライヴ盤の次は'Jazz At The Collage of Pacific'53.12(画像1)で、オバーリン大学は純粋にライヴだが前回のブラックホークと今回のパシフィック、'Jazz At The Storyville'53.12,54.3,7(画像2)は録音状態の良さ(オバーリンも良いが)と演奏の安定感からも擬似ライヴかと思われる。
ブルーベック・カルテットはデスモントのアルトは最高だがリーダーのピアノがスウィングしない、とデビュー当時に評され、後々までその評価が尾を引いた。「ブルーベック~デスモント」の頃はそれもあながち不当ではなかったが、この頃には活発なコンサート・ツアーの成果もあってかブルーベックのピアノも快適なスウィング感を獲得している。
「パシフィック」「ストーリーヴィル」は共に全6曲のスタンダード集でデスモントのアドリブにたっぷりと時間を割き、バンド・アンサンブルが見事にチームとしてまとまっている。

当時黒人ジャズはビ・バップからハード・バップへの移行期、白人ジャズはいくつかのクール派に分かれていずれも主流には至らなかった。ブルーベック~デスモントのコンセプトはレニー・トリスターノリー・コニッツの特異なクール・ジャズの平易化ではあったが、ジャズが陥りがちな個人的な天才の音楽ではなく、小粒ながら完成度とポピュラリティでは時代の水準を抜いていた。「パシフィック」の'All The Things You Are','Laura'、「ストーリーヴィル」の'Over The Raimbow','You Go To My Head'などありふれたスタンダードがこのカルテットにかかると一味違う。

54年ブルーベックはついに全米一の週刊誌「タイム」の表紙になり(ジャズマン初)、大手コロンビアと契約して全国区になる。'Brubeck Time'54.10,11(画像3)はその記念アルバム。ヘプバーンに捧げた'Audrey'が美しい。