人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(補8c)セシル・テイラー(p)

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Cecil Taylor(1929-,piano)。
テイラーはビル・エヴァンスと同年生まれで、奇しくも同じ56年9月にデビュー作を録音している。一般的な人気や音楽性への賛否とは別に、テイラーへの注目がデビュー直後から高かったのは第2作が早くも有名ジャズ・フェスティヴァルでの収録で大手からリリースされたことでもわかる。黒人のインテリ・ジャズマンによる前衛ジャズとしてテイラーの音楽は批判者さえも驚愕させるような先鋭性と、未知の将来を期待させるスケールの大きさをそなえていた。ニコルス、ツワージク、ホープら不遇ピアニストよりわずかに後のデビューながら、テイラーは出発から正当な評価に恵まれていた。エヴァンスへの評価よりも早かった、といってよい。

テイラーのキャンディド・レーベルへの録音セッションは60年10月と61年1月の2回に渡り、前回紹介の「セシル・テイラーの世界」を含めてCDでは5枚に分けて発売されている。
Air(画像1)60.10.12&13
-は「~世界」の未収録曲と別テイク集で、未収録曲'Number One'ではドラムスにサニー・マレーが起用されているのが注目される。タイトル曲の別テイクは3テイクもあるが10分半や17分半など演奏される度に曲の表情が違う。

次のキャンディド録音、
New York City R&B(画像2)61.1.9&10
-は当初別レーベルから発売され、ベーシストのビュエル・ネイドリンガーとの共同リーダー名義だが、名目だけなのは音楽を聴けばわかる。内容はオリジナル3曲にエリントン1曲(『昔はよかったね』)。エリントン曲は8人編成で、オリジナルはピアノ・トリオ2曲とテナーサックスにアーチー・シェップが加わったカルテット1曲。まとまりの良かった「~世界」の後でいろいろ試してみたのだろう。

キャンディド倒産後に発売された未発表曲・別テイク集は先に「エア」を紹介したが、LP時代では、
Jumpin' Punkins(画像3)61.1.9&10
-が唯一のものだった。'O.P.'と『昔はよかったね』が「ニューヨーク~」の別テイクで、マーサー・エリントン(息子の)のタイトル曲は8人編成、テイラーのオリジナル曲'I Forgot'はアーチー・シェップ入りカルテットとヴァラエティに富んでいる。