人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

おいしいナポリタンの作り方

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かなり前にも紹介したが、伊丹十三に「カンツォーネを聴きながらスパゲッティを食べよう」というレコードがある。昭和43年の発売で、伊丹十三が女性アナウンサー相手にたれるウンチクと、大野雄二がイタリア人女性歌手を起用したラウンジ調カンツォーネが交互に流れるという内容。当時はこうした企画物アルバムが流行していた、ということでもある。90年代から昭和40年代のモンド文化の再評価があり、10年ほど前にこの作品もCD化されて評判になった。相手の女子アナが聞き上手で、まるでベッドの中の会話を盗聴しているようなセクシーさが溢れているのだ。

レコードの内容は、
第1章/スパゲッティは「炒めうどん」ではない~音楽
第2章/スパゲッティの正しい作り方・食べ方~音楽
第3章/牛肉は「うま?」というおかしな話~音楽
第4章/目玉焼きの食べ方・そっと、そっと、そっと~音楽
第5章/スパゲッティ・ソースの作り方~音楽
第6章/イタリア料理は家庭の味~音楽

-という構成からなる。なぜ唐突に目玉焼きが出てくるのか疑問だが、後年の出演作品「家族ゲーム」で目玉焼きの焼き加減にやたらうるさい父親役を演じていたのは、伊丹自身のキャラクターだったのだ。
とにかく第1章のタイトルからして、昭和43年の日本ではスパゲッティ=ナポリタンだった。筆者の母なども、輪切りのピーマンと玉葱をグリーンピースと刻みソーセージで炒めあわせ、さらに茹でたスパゲッティとトマトケチャップを和えながら炒める、という調理をしていた。今ではこんなナポリタンは昔風の喫茶店かスナックでもないと出てこない。パスタ専門店ではお目にかかれない。

ナポリタンが横浜のホテル内レストランで考案された和製イタリア料理であることは、冷し中華が戦後の混乱期の考案、みそラーメンは60年代末の発祥であること同様、周知のことになっている。
が、先日筆者はテレビ番組で意外なナポリタンの秘密を知った。茹でたての麺は使わないのだ。密閉して、冷蔵庫で一晩、寝かせる。茹でたてだといわゆるシコシコしたアルデンテだが、寝かせることで麺の芯まで全体がもちもちした生麺の食感になる。だから家庭で作りおきしておいたようなナポリタンは、偶然伝統的な和風ナポリタンの正道に沿っていたわけだ。
お試しあれ。本当にもっちりした麺になるのだ。