Henry Grimes(1935-,bass)。
50年代後半~60年代半ばに活動したグライムスは突然ジャズ界から消息を絶ち、故人になったものと思われていた。ジュセッピ・ローガンみたいにホームレスになったあげく精神病院という噂(事実だったが)ほどではなかったが、おそらく郷里に隠棲して病没したと思われていた。グライムスは一流ジャズマンと共演してきた実力派だったから、病没以外の事情は考えられなかったのだ。
ところが2003年、ジャズ批評家が宿泊したホテルでヘンリー・グライムスの名札をつけた従業員を見かけ、本人なのを確認した。たちまちグライムスはジャズ界の第一線に還り咲いた。2007年の復帰作を皮切りにラシッド・アリ(ドラムス/元コルトレーン・クインテット)との'Going To The Ritual'(画像4)2008、2枚組の'Solo'(画像5)2009など5作品を発表している。
リー・コニッツやセシル・テイラーのグループで活動してきたグライムスが、実質的に双頭グループを初めて結成したのは、
Perry Robinson:Funk Dumpling(画像1)62
-になる。ケニー・バロンがピアノ、ポール・モチアンがドラムスのこのクラリネット奏者のアルバムで、グライムスとロビンソンは半々のオリジナルを書いている。
アルバム'Our Man In Jazz'を元オーネット・コールマン・カルテットのドン・チェリーとビリー・ヒギンズを起用して発表後、ベースにはグライムスが抜擢されヨーロッパ・ツアーが行われる。
Sonny Rollins:The Complete 1963 Copenhagen Concert(画像2)63.1.15
-は5枚あるラジオ用音源では最高だろう。90分で5曲、ロリンズ流のフリー・ジャズが聴ける。
ESPレーベルから発表された、
The Call(画像3)65.12.28
-こそグライムス初の(長年に渡り唯一の)リーダー作だった。ロビンソンのクラリネット、トム・プライスのドラムスからなるトリオ(クラリネットのピアノレス・トリオなど前代未聞だろう)による、このアルバムにしかない独創性を感じさせるフリー・ジャズの名作。グライムス4曲、ロビンソン2曲のオリジナル全曲が素晴らしい。