人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(補20d)アルバート・アイラー(ts)

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Albert Ayler(1936-1970,tenor sax)。
エリック・ドルフィーがオランダ国営放送用に録音した「ラスト・デイト」64.6.2はヒルヴェルスム市のスタジオで収録され、6月29日のドルフィーの急逝により遺作となった。旧友のコルトレーンが「クレッセント」を完成した時期、アイラーが「スピリチュアル・ユニティ」の制作に備えていた時期にあたる。

The Hilversum Session(画像1)64.11.9
-はその因縁のスタジオでラジオ放送用に録音されたが、レコード化はずっと遅く1984年になる。現地ジャズマンと一回のリハーサルで制作されたドルフィーとは異なり、メンバーは前作「ゴースト」と同じドン・チェリー入りカルテットになる。前作とだいぶ雰囲気が違うのは'Ghorts'と'Spirits'以外新曲だからかもしれないが、チェリーは後にアイラーとの共演を「怒りをこめた演奏」と回願している。だが表面的なムードとは違って、アイラーはラヴ&ピースの人だった。前作のような一体感に欠けるのはそのせいかもしれない。

Bells(画像2)65.5.1
-はLPレコード片面だけの変則アルバムで、ジュセッピ・ローガンの'More'と同日のESPレーベル祭りからのライヴ。サニー・マレー以外はルイス・ウォレルのベース、チャールズ・タイラーのアルト、実弟ドナルド・アイラーのトランペットという編成。『ベルズ』という曲よりも、これまでのアイラーの代表曲をメドレーにしたものといえる。

次作、
Spirits Rejoice(画像3)65.9.23
-で中期アイラーのスタイルが本格的に始まる。メンバーは「ベルズ」からベースがヘンリー・グライムスとゲイリー・ピーコックのツイン・ベースになり、一曲だけ、カール・コブスがハープシコードを弾く。牧歌的テーマ・アンサンブルと極端なフリー・ジャズが交差する、というアイディア自体は「ザ・ヒルヴェルスム・セッション」からすでに芽生えていたが、チェリーの解釈が「怒りに満ちたフリー・ジャズ」だったためどっちつかずの演奏になっていた。「ベルズ」では20分間のメンバー形式で楽曲をパッチワークし様式の変化を実験してみた。それがこのアルバムに結実した、といえる。