人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2007年9月14日(釈放翌日)

まず昨日の記事に寄せられた疑問への回答から。その疑問とは、ノルマやモデルケースというのが納得できない、というものだった。正確には「納得できかねます」という表現だったが、~かねます(かねません)というのは90年代から女性の間で謙譲表現として誤用さて広まった用例なので、ここでは中立的な意見として解釈したい。
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納得できかねます、とおっしゃるのがどういう意味か明瞭ではありませんが、罪状の捏造というものが事実行われ、いわゆる冤罪が発生するのは-ぼくの件がそれに当るか、眉唾と見るかはお読みになった方次第ですが-法執行、特に新法や新条令の場合にはしばしば行われてきたことです。ノルマ、またはモデルケースというのはそういう意味です。新条令が作られたからには、その施行例が求められる。そこで現実にはその条件を満たしていないにも拘らず、条令に抵触するように事件が盛り込まれ、結果的に捏造による冤罪を客観的に被告が反論できない状態に追い込む。大逆事件治安維持法の昔からこの種の冤罪がこと欠かないのは、多少とも歴史をご存知であれば自明でしょう。幸い生涯こうしたことと無縁でいらっしゃる方も世間の大半を占めていて、そうした方々は無邪気に司法の正義を信じておられる。羨ましいことです。

ぼくは独居房で毎日、一日中日記をつけて過ごした。基本的に未決囚は一日中着席していなければならないのだ。釈放されたらその晩だけは実家に泊まらなければならないだろう。翌日は不動産屋で即日入居可物件を仮契約し、実家はぼくを同居させたくないから保証人になってくれる。移転先が決定したら多摩区役所に転出届を取りに行き、座間市役所に転入届を出して住民票と住基カードを買い、国保の移転手続きを済ませる。生活保護も視野に入れて受給条件を打診しておくべきだろう。すべての書類を揃えたところで賃貸住宅の本契約。これを14日の半日でできるだろうか?

やってのけた。朝9時には不動産屋を訪ね、老朽マンションとはいえ駅前一分のユニットバスつき六畳ワンルーム、南向きヴェランダ二畳で月四万円、敷礼各一月、手数料一万五百円と、これ以下は望めまい。昼食を摂る余裕こそなかったが多摩区役所に転出届を取りに行ったついでに次女の通う保育園に寄り、サボテンの鉢植えを寄贈した(ぼくの身代りだ)。午後3時にはぼくは何もない部屋の世帯主だった。