人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アガサ・クリスティーの隠れた傑作(中)

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筆者が「隠れた傑作」として上げた三作以外にも、クリスティーは世評に上がることの少ない多くの秀作がある。クリスティーにとってのアヴェレージ作は普通の推理小説作家にとっては優に代表作足りうるものなので、それは最晩年の諸作-「フランクフルトへの乗客」1970(ノン・シリーズ)に始まり「復讐の女神」1971(ミス・マープル)、「象は忘れない」1972(私立探偵ポアロ)、「運命の裏木戸」1973(夫婦探偵トミーとタペンス)まで及ぶ。最後のものは新作としては絶筆となった作品で(「カーテン」1975と「スリーピング・マーダー」1976は没後発表のために完成されていた1943年度執筆作)、作者は意図的にノン・シリーズものから始めてレギュラー探偵の最終作を書いていったのだった。クリスティーは1970年に80歳を迎えていた。1974年には新作は発表されず、1975年に「カーテン」を発表、そのベストセラー中の1976年逝去した。見事なものだ。

前説が長くなったので、筆者が「隠れた傑作」ベスト3に推す三作の紹介は早川書房の「ハヤカワ文庫解説目録」から引用する。「クリスティー文庫」としてアガサ・クリスティーの全著作100冊+ガイドブック2冊が刊行されている。では、年代順に。

「ひらいたトランプ」1936
・名探偵ポアロは、夜ごとゲームに興じ悪い噂の絶えないシャイタナー氏のパーティに呼ばれた。が、ポアロを含め八人の客が二部屋に分れてブリッジに熱中している間に、客間でシャイタナー氏が刺殺された。しかも、客たちは殺人の前科をもつ者ばかり…ブリッジの点数表を通してポアロが真相を読む。

「愛国殺人」1940
・歯医者での治療を終えてひと息ついたポアロの許に当の歯医者が自殺したとの電話が入った。なんの悩みもなさそうな彼に、自殺の兆候などなかった。これは巧妙に仕掛けられた殺人なのか?マザー・グースの調べに乗って起る連続殺人の果てに、灰色の脳細胞ポアロが追い詰めたものとは?

「五匹の子豚」1943
・十六年前に、高名な画家だった父を毒殺した容疑で裁かれ、獄中で亡くなった母。でも母は無実だったのです-娘の依頼に心を動かされたポアロは再調査に着手する。当時の関係者の証言を丹念に集める調査の末に明らかになる驚くべき真相とは?過去の殺人をテーマにした代表作!

(次回へ)