人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟の思い出40

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・3月20日(土)晴れ
(前回から続く)
「Stくんの話で第一病棟の一階・二階も本来の区分は名目だけの混合病棟になっているのはわかったが、それは本館の二階と三階に分かれる(一階は外来・検査室、薬局など)第二病棟と第三病棟でも同じで、本来第三は急性期の患者のための一時的中継病棟で、一過性の患者なら症状が鎮静すれば退院、一般科の精神疾患で慢性症状(長期入院)なら第一へ、アルコール依存症学習入院は第二に移室するのだが、第一が常に満床なので慢性患者が第三から移室しきれず、それに伴い一過性の一般科患者が第三から押し出されて本来はアルコール科病棟の第二に移室されている。躁鬱のKくんや鬱病のSmくんがそうだ(注1)。統合失調症のHAもそう。Stくんは2年間の入院決定の慢性症状なのに第三にいる(注2)。アルコール科は三か月が目安の学習入院なのでベッドに余裕があり、その分一般科から回される人もいるのだ」

「昼食後の雑談中に、KくんにTnくんと並んでベンチにいた若い女を知っているか尋ねると、知らないという。初対面なのに友人に、素敵な人よ、とても頭がいいんだって、と紹介された理由がわからない。Kくんがいいなあ佐伯くんはモテて、と心底羨ましそうにボヤく。そりゃ佐伯さん女の人にモテますよ、聞き上手だからとSmくん。なぜかHAが近くで聞き耳を立てていて、それって女のいる前で失礼じゃないの(注3)?Smくんは苦笑して、こう言えばいいかな、さびしい女の人は優しく話を聞いてくれる人を好きになるってこと(注4)。Kくんが、でもモテていいなあ(注5)。いや、切り上げるのも気を使うんだよ。Mさん苦笑。Stくんが推測するには、第三と第一はOTで一緒になるから第三から噂を聞いてたんじゃないかという。だが第三には入院最初の一週間しかいない。それで素敵で頭がいい佐伯さん、という噂が一人歩きしていたなら冗談みたいな話だ」

(注1)入院中から懸念していたのだが、彼らは半年後には統合失調症も併発して再入院した。彼らの言動は入院中におかしくなっていくのがわかった。
(注2)Stくんもその後第二病棟に移室される。
(注3)立ち聞きしていた彼女に文句を言われる筋合いはない。
(注4)Smくんの奥さんは等級一級の統合失調症
(注5)Kくんの二回の結婚は二度とも風俗嬢の水揚げ。