人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記173

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(人名はすべて仮名です)
・4月10日(土)晴れ
(前回から続く)
「これまでの入院、ただし一般精神科だが、そこでも上映会があったのは寅さんや釣りバカ、『ホーム・アローン』や『おくりびと』(最後のは違うか)などの、俗に言うファミリー映画ばかりだった。たまたまテレビ放映があったから、しんちゃん映画は週末で身も心もくたびれた入院患者にはちょうど良かった。10時を過ぎるとデイルームには山崎さん、尾崎さん、勝浦くんだけになっていた。尾崎さんは中途覚醒の繰り返しで二時間ごとに目が醒めてしまうという。入院までは高血圧と糖尿で内科系の眠剤を服用していたそうで、半ば諦めがちだったが10時の一服で寝に行った。山崎さんもいつの間にか部屋に戻っている。11時の消灯まで勝浦くんの話の相手になる。話題はいつも通り散漫で現実味がなかったが、おそらくこの程度が軽鬱で安定した状態なのだろう」

・4月11日(日)晴れ
「静かな朝食、今週も食後すぐにみんな部屋に戻るので、『ハートキャッチプリキュア』第10回『最大のピンチ!ダークプリキュアが現れました!』をしみじみと観る。アニメでは先週から東京MXテレビで月~金の毎夕『YES!プリキュア5』と、日曜夕から『ガンバの冒険』『母をたずねて三千里』をやっている。その時間帯だと入院中は諦めるしかない。退院後の楽しみにするしかない。プリキュアの後は自室に戻って朝の会まで寝ていようとしたら、渥美さんから東京新聞、と買い物に誘われる。お伴、という方が実情に近い。今回の入院は他人のお伴ばかりしているような気もするが、それができているうちはまだ自分も余裕があるということだ。外は上着のいらない暖かさで、桜の花びらも舞って、チューリップがふっくりとほころんでいる。渥美さんの買い物の間は日用品の価格などを見ていたが、渥美さんは自分の買い物を済ませると500円玉を渡してきて、なんでも好きなものを買え、というジェスチャーをする」

「一旦遠慮したが押し問答になるのも無意味なので前回と同じガーナの百円の板チョコを買って、お釣りを返す。そういえば昨夜、渥美さんの酒歴の最終稿、金曜の段階での問題点・補足点を別紙にいくつか例文を書き出し、構成を変えて清書したものをまとめて、ようやく完成しましたね、ここまで長かったですね、と慰労したばかりだったと思い出した」(続く)