(人名はすべて仮名です)
・4月22日(木)雨
「昨日の全体会で席替えがあり河出は別のテーブルに移ったのでうちのテーブルは全員喜ぶ。替りに退院を間近に控えている清水くんが移ってきた。清水くんは散歩仲間には加わらず寝ていることが多いが、雑談には普段から加わってくるのでテーブルはにぎやかになる。向かいに金田さん、梅崎さん、滝口さんと女性三人、こちらは清水くん、佐伯、勝浦くんと男三人なので、喫煙室で中里さんや尾崎さん始め口々にパンチDEデートかとからかわれる。だが女性三人はアルコール依存症だし、男三人のほうはさらにややこしい病気をかかえている。躁鬱二人、うち一人はアルコール依存症入院で、もう一人は鬱病入院だが言動は統合失調様状態を呈している」
「ただし清水くんは明朝の朝食後に退院なので一日限りだ。アルコール科入院ではないので朝の会で抗酒剤を服用する必要はないからだ。午前中は檀門先生の診察。血液検査の結果は良好で、順調な回復状態。来週水曜日のAAミーティング出席の外出許可と来月1~2日の週末帰宅外泊許可をもらう。家賃納入や公共料金の支払い、四月中に済ませられないが許容範囲だろう。酒歴発表が10日に決ったので、いつ頃を退院の目安としていいか訊いてみる。これまでは緊急医療保護入院ばかりだったから退院日は選べなかったが、今回は任意入院、ただし生保医療なので医師の同意という条件つきだが、何日~何日の範囲で、という中からなら選べるのだ。退院後はアルコール面も双極性障害で通院しているクリニックの受診で良い、と了解も得た。酒歴発表から一週間~10日が目安でいいでしょうか?妥当なところでしょう、と言われる」
「患者の入れ替わりが相次ぐので直接関りはないが落ち着かない、と相談すると最小限のプログラムや食事・入浴以外はなるべく部屋にこもっているように、人にはなるべく関らず、特に女性患者は気をつけて、と言われる(註)。…午前中のうちに酒歴アンケートを書き上げ提出。昼食後、テーブルを通りかかった山崎さんが、今日は俺、誕生日なんだ。還暦。おめでとうございます、とみんなで拍手するが、数週前に羽田有紗が冬村さんににおわせていた山崎さんの検査結果は、胃のステージ4の末期癌だと昨晩松本さんから勝浦くんともども聞いている」
(続く)
(註)注意していたが、まだ用心不足だった。