人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

偽ムーミン谷のレストラン(7)

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ムーミンムーミンパパとムーミンママが宙の一点を見つめて硬直しているのには気づかず、当然いるはずはないスノークがつられて見つめているのも、つられてフローレンも見つめているのも、つられてヘムレンさんも見つめているのも、つられてヘムル署長も見つめているのも、つられてスティンキーも見つめているのも、つられてミイも見つめているのも、つられてミムラも見つめているのも、つられてジャコウネズミ博士も見つめているのも、つられてトフスランとビフスランも見つめているのも、あのスナフキンすらつられて見つめているのも気づきませんでした。
というのもムーミンムーミンであり、もっとも無知で無害な者を治者にまつりあげるのはあからさまな権力逃走を避けるためによくある少数民族の制度だからです。市井の学者であるヘムレンさんによって異なる種族と解明されるまで、ムーミン族はカバの一種と誤解されていた時期がありました。しかし古代の貨幣単位にすらムーミンの名が用いられているところを見ると、このカバもどきの種族が代々ムーミン谷の象徴であったことは、ほぼ確実です。ムーミン族は代々例外なく間の抜けた男子をもうけることでも特徴があり、怜悧な女子はスノーク族と似通っています。
ムーミン族とスノーク族は遺伝子形質の99.998%までが一致しており、その差がいわゆる知性なのではないか、とムーミン族以外の誰もが(ムーミン族も女性は)推測していますが、口にするのをはばかるのはフローレンならともかく、カツラ自慢の兄スノークが増長するからです。
スノークのうぬぼれの強さが知性なら、ことあるごとにこのハゲ!ハゲではないカツラはおシャレなのだ!このカバ!スノークはカバではない、ムーミンたちに言いたまえ。ムーミンがカバならあんたもカバじゃん!私がカバならお前はバカだ、はっはっは。
そんな見苦しい応酬をミイ相手に毎日のように繰り返すスノークが、ムーミン谷には文明などは私の部屋にしかない、などとヘムレンさんやジャコウネズミ博士までも嘲っている様子を見ると、嫌味な知性などない方がましだ、とムーミン谷の誰もが思うのでした。
そうだ注文が済んだんだ、とムーミンは思い出し、トイレ、とひと言言って席を立ちました。そんな事情で誰もがムーミンの中座に気づかなかったのは僥倖というものでしょう。