人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記224

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(人名はすべて仮名です)
・5月13日(木)晴れ
(前回より続く)
「尾崎さんは見た目は角刈りで元ヤンキー然としており、長距離トラックが仕事だというから自前のトラックで契約ドライバーとして働いていたのだと思うが、長距離を何時間もぶっ飛ばしていると飲みたくなる。ついには酒の勢いを借りないと運転できなくなり、それがバレて職をなくして奥さんと子供に逃げられた。でも誕生日に図書カードを贈るとありがとう、と手紙が来るそうだ。羨ましいというより、そういう関係もあるんだな、と思う」

「見た目は喧嘩上等という感じだが、話すと気さくな好人物だ。好きなバンドはZ.Z.トップならぬキャロルで、好きな映画は『トラック野郎』シリーズというのもそのまんまで良い。それで尾崎さんか森下くんと話すと必ず猥談になる。勝浦くんも猥談になると日頃の愚痴っぽさがなくなるので楽だと言っていいくらいなのだが、今回はちょうど降谷智子がぬけぬけと37歳を自称したタイミングだったので、盛大に彼女に向けたセクハラ話になる」

「猥談を話しているとカンが働くのか、やはり森下くんもいつの間にか加わっている。いくらいかれたクルクルパー女とはいえ、四方八方からセクハラ責めにするのはあまり趣味が良くない。もっとも降谷自身がまるで動じず、面白がってどころか自称パピヨンのミミちゃんと呼ばれるママだそうだから、身体障害者雇用が売りの風俗店が実際に昔からあるように、精神障害者がママをやっている店があってもおかしくない。まともな客にはまともじゃない女の一挙一動が可笑しくてたまらないだろう。佯狂というのでもあるまいが、スナックの類と思われるパピヨンで降谷智子が接客するなら、この病棟でしているように突然歌ったり踊ったりしているのだろう」

「検温、シーツ交換。勝浦くんは17日退院が決定しているので替えない。朝の会の後は午前のプログラムはないので、今日の主治医診察の対象患者以外はほとんど全員散歩や買い物に出かけていく。順番表に真っ先に記名したが診察そのものが20分遅れて始まった。この一週間の経過や、病棟一の古株になってしまったので何かと訊かれたり手伝わされたりで煩わしいこと、退院は酒歴発表日から10日が目安と言われたので20日です、とはっきり希望日を伝える。つまり退院まであと一週間だ」(続く)