人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記235

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(人物名はすべて仮名です)
・5月15日(土)晴れ
(前回より続く)
「拍手を受けて断酒会地区会長もでは今夜はこれで、と閉会したのに、池田くんの質問、というより意見陳述は止まらない。少しだけ参加患者もこらえたが坂部(いかにもあいつらしい)が喫煙室に立ったのを皮切りに、尾崎さん、大芝くんと次々に喫煙室に席を立って行き、なしくずしの閉会になった。さて、この病棟は非公式の患者会リーダー制があって冬村さんは先代から、現在は佐伯が冬村さんから引き継いだことになっている。集団行事の指揮はリーダーが執らなければならないのだ」

「部屋に行って勝浦くんに声をかける。終ったから喫煙室出入り自由だよ。そうか。勝浦くんは会場の仕度は手伝ってくれたがアルコール科ではないので部屋に引っ込んでいたのだ。実は勝浦くんには助けられている。彼はそれほど大柄でもないのだが、動作が大振りで声もでかいので目立つのだ。しかも独り言や無駄口も多いので勝浦くんがいると陣頭指揮が執りやすい。リーダーが大声を出さなくて済む。勝浦くんは案の定終ってるんなら片づけちまおうぜ、とデイルームを片づけムードに誘導してくれた。まだ質問している池田くんは端の席だったのでそのまま片づけは済んだ」

「あさって退院だからか勝浦くんは以前第一病棟の田中くんや羽田有紗に示していたような関心を池田くんに向けないが、田中くんは勝浦くんや清水くんの話からでは降谷智子と類似した症状の統合失調症なのだろう。清水くんの病状は勝浦くんも心配しているが彼らは友人なのだ。池田くんの症状は本人の言う双極性障害アルコール依存症だけではないだろう。地区会長も帰り、池田くんが何とか症候群から統合失調症へ、と島田さんに話しているのを通りかかった」

アスペルガー症候群か。あの空気の読めなさ、散歩中食べ歩くのを止めなさいと言われるとしゃがんで食べ続ける言語類推能力の欠如、おそらく高い学習能力と創造性、ムラのある集中力、自閉症的傾向。アスペルガー躁鬱病アルコール依存症なら同じ診断を受けていることになるが、彼はもう奇行が常態になっているくらいまで進行している。外出飲酒・院内飲酒で済む奇行ならまだ飲酒下の症状のうちだが、おそらく素面であの状態なのだ。統合失調症の併発もあり得るばかりか、社会生活も困難かもしれない」