人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記238

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(人物名はすべて仮名です)
・5月17日(月)晴れ
朝日新聞朝刊、ロニー・ジェイムズ・ディオ訃報、享年67歳・胃癌(16日没)」

「今日は動きがあわただしい。まず勝浦くんと小林くんの退院があるが、その前の朝食後に坂部が池田くんに冷蔵庫整理を教えていて絶対何かやらかす魂胆だなとの予想通り、尾崎さんの牛乳と大芝くんの紅茶を記名がないからと勝手に捨てていて、当然尾崎さんも大芝くんも憤慨するが坂部はニヤニヤ笑って開き直っている。もちろん謝罪のひと言もない。その後、尾崎さんと中里さんが話し合って坂部に勝手をさせないために冷蔵庫整理は部屋単位で班を組み、順に担当、と朝の会で提案してほしい、と頼まれる。患者会リーダーはこういう雑用の音頭も取らなければならない」

「病院側から朝の会で移室と席替えの発表がある。篠田・吉村の二床部屋二名が四床部屋に移り、一床部屋中島が二床部屋へ、田所第三病棟から移室予定で席は勝浦くんの退院後の空席をあてがわれる。尾崎さんたちから頼まれた動議を通し(島田さんから後で、わかりやすくきちんとしていて良かったとほめられる)、小林くんと勝浦くんが退院のあいさつ。勝浦くんは歯切れ悪く、アイ・シャル・リターン、と言おうと思っていましたが、止めました(坂部のみ笑)、みなさんも二度と入院しないでください。勝浦くんも最後は良識で締めたか」

「冷蔵庫整理の班と順番は患者に任されたので尾崎さんが買って出るが鉛筆片手に苦労している。喫煙室で一服していると降谷智子が一服しにきて、尾崎さんの様子を見てひと言、バカがやってもしょうがない。思わず吹きそうになる。こんな台詞を降谷から聞くとは出来すぎなくらいだ」

「結局尾崎さんは日直当番に冷蔵庫整理も含める、と明快で合理的な案に落ち着いた。尾崎さんに頼まれ今日の担当看護婦から了解を得る。日直の週番を決めるのは婦長だから患者間に公不公平が生じることはまずないし、何かあっても患者間での責任問題にはならない。―と当然思えたのだが看護婦の了解と婦長への申し送りだけではすんなりと決まらなかったのだ。いや看護婦の了解で尾崎さんの提案はそのまま通ったのだが、尾崎さんがデイルームのみんなに伝えようとすると坂部が屁理屈をこねて食らいつき、すんでのところまで一触即発の事態になってしまったのだ」
(続く)