人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アンドレ・ジッド(14)ジッドとジャンル意識(続)

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ようやくアンドレ・ジッド(1869~1951)の小説以外の著作について、具体的にご紹介できます。まず劇作家としては、
[戯曲]01年(32歳)『カンドオル王』・08年(39歳)『バテシバ』・31年(62歳)『エディプ』・39年(70歳)『十三本目の木』・45年(76歳)『一般の利益』
と生涯に渡りますが、ジッド自身は自作を黙読用戯曲(レーゼ・ドラマ)としていました。レシとの違いは、ジッドの小説は視点が固定されており、視点人物を必要としない作品は戯曲形式に回したと思われます。

ジッドの本領は小説より批評にあるとされていて、
[文学論]1903年(34歳)『プレテクスト』・05年(36歳)『ワイルド論』・11年(42歳)『続プレテクスト』・23年(54歳)『ドストエフスキー』・24年(55歳)『文芸餘話』・29年(60歳)『モンテーニュ論』・32年(63歳)『ゲーテ』・41年(72歳)『アンリ・ミショーの発見』・49年(80歳)『秋の随想』
―はいずれも重要で示唆的です。『秋の随想』は24年のコンラッド論から48年のアルトー論まで含む集大成的な一冊です。

ですがより大きな反響を広い読者から呼んだのは、
[紀行]1906年(36歳)『アミンタス』・27年(58歳)『コンゴ紀行』・36年(67歳)『ソヴェト旅行記
[時事論集]1928年(59歳)『チャド湖より帰る』・31年(62歳)『偏見なき精神』・37年(68歳)『ソヴェト旅行記修正』・43年(74歳)『架空会見記』・50年(81歳)『行動の文学』
このうち『アミンタス』は初期の詩的散文の延長ですが、『コンゴ紀行』以降は痛烈な権力批判です。それが『贋金つくり』の翌年から始まるのに注目を。

最後にジッド最大の大著になった自伝的告白、日記です。段階的に私生活を公表したのがわかります。
[自伝]1911年(42歳)『コリドン』・20年(51歳)『一粒の麦もし死なずば』
[創作日記]26年(57歳)『贋金つかいの日記』
[日記]39年(70歳)『1889―1939年』・46年(77歳)『1939―1942年』・50年(81歳)『1942―1949年』・51年(没後)『秘められた日記』
結局これらを読めばジッドの創作はその時々でのサンプルでしかないのです。