さてこうして、とヘムル署長は乾杯の音頭を取り最初のひと口をすすると、型に寄せたテーブルの仲間に言いました、現在のムーミン谷でもっとも賤しい稼業の四人が揃ったわけだ。
ジョッキに口をつけていた他の三人も次々最初のひと口を飲み込むと、ずるいぞ署長、それは私が先に言うつもりだったのに、とジャコウネズミ博士。私もだ、とヘムレンさん。いややっぱりそれはあっしですよ、とスティンキー。
いや泥棒のきみではただのジョークにしかならん、谷の知性を代表するヘムレンさんや官僚学者の私が言ってこそ真のジョークというものだよ。
そこなのさ博士、と署長、私など規則を決めて厳守させ、違反する者は処罰するのが職務だ。最低最悪の仕事だろう?まともな良識あるトロールには、こんな人権を蹂躙した職務などやましくて務まらんよ。
だが署長の働きあってこそ谷の秩序もあるのだしな、スティンキーくんが谷の経済を裏で活性化させてくれているのも署長の適正な加減のおかげだ。
そう言われるとこそばゆいが、と署長、せっかく悪党四人揃ったのだ、いかさまトランプでもやらんか?よし、本気ならポーカーやブリッジと行きたいがわれわれは全年齢向けトロールだからな、ババ抜きでいこうか。しかしテーブルは前菜が並んどるしな。
なに、こうしよう、と博士はノコギリを取り出すと、型のテーブルの桃割れ部分から四角くゲーム台を切り抜いて、杖でテーブルの横に立てました。これでよかろう。
うむ、席はどうする?やはり互い違いがよかろう。でも署長とスティンキーくんは対面できんぞ。
いやあ、と署長は鋏を取り出し、手錠の鎖をプチンと切りました。いいのかね?ふっ、後で蝶結びにでもしておくよ。
四人は泥棒、博士、警官、知性の右回りで四辺に座りました。カードをカットしようか。はい!とすかさずスティンキーが斧で真っ二つ。やると思ったよ。
署長は新しいトランプを取り出して素早く切って渡すと知性も素早く切って渡すと泥棒も素早く切って渡すと博士も素早く切って渡すと署長も正面の泥棒・博士・本人・知性、と右回りに素早く配り、さてどうですかみなさん?
上がりだ!とゲームを始めるより早く四人全員同時に上がりでした。ん、ジョーカーは?さあ。
ひさしぶりにギャンブルを堪能したよ。さて食事に戻るか。ところでこの気の抜けた飲み物は何かね?
ああ、ホッピーですよ。