要するにルーシーはさ、とスヌーピーは言いました。コブシで語り合いたかったんじゃないの?-というのがこの賢者の犬の見解でした。文法的に限定すると賢者の犬の「の」は所有格ではなく形容副詞の「の」です。前者の用法なら賢者はチャーリーということになり、これは彼にはいささか荷が重いでしょう。では後者、賢者たるスヌーピーの場合この極端に怠惰か遊んでばかりいるかの犬のどの辺が賢者かを説得力ある説明をするのは難しいことですが、人間に較べればゴキブリ一匹さえも合理的ならざる活動はしません。スヌーピーの場合は限りなく人間に近づいた犬ですがそれでも犬は犬なので、単に犬であるということだけでも人間との比較において十分に賢者と呼べるのでした。おわかり(Q.E.D)?
だからさ、きみの言うとおりルーシーが、パインクレスト小学校に登校してくるやいなやライナスの毛布を引きちぎったかと思うとピッグペンから埃をはたき落とし、高潔なフランクリンにこの黒人野郎と暴言を吐きながらペパーミント・パティとマーシーを追い詰めて眼鏡を奪うとグシャッと踏み割り、シュローダーのトイピアノを叩き壊して走り出して行ったのは、要するにルーシーなりのコミュニケーションなのさ。
それじゃライナスがリランのオーバーオールを被せられ、指をしゃぶろうとすると指がなかったのはどうなるんだい?それもコミュニケーションかい?
姉と弟の間柄なら他人よりもいくらかは過剰になるものさ。
でもね、それでも、まだ済んでないのは、とチャーリーは息せききって、言葉を継ぎました。次にルーシーが標的に選ぶとしたらここなんだ。もちろんぼくのグローブもまっ先にこれさ、と彼はまだボロボロの残骸を未練惜しげにぶら下げていました。
それはもう聞いた、とスヌーピーは冷淡に、場合によってはルーシーはみんなの気持を代弁しているということにもなるだろうね。
ひどいよスヌーピー!ぼくの場合はいいザマだって言うのかい!?
まあ熱くなることはないさ、と賢者の犬。誰にもルーシーの本意はわからない。突然イカレちゃったようにも見えるし前からイカレていたとも言える。
そんな、とチャーリー・ブラウン。ならぼくたちは、どっちみち諦めなきゃならないっていうのかい?