人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(4)

 突拍子もないミッフィーちゃんの提案にアギーもバーバラもウインもメラニーも黙っていましたが、別に無視を決め込んでいたのではなく本来無口なのがうさぎの性質だったからでした。植物は話しかけるとよく育つ、と言われますが、うさぎほどの高等生物になると今さら何事にも動じないのです。だからといって感受性に乏しいわけではなく、嘆き悲しむ人びとの声が右の耳から入ってくれば、それはそのまま左の耳から抜けて行くのでした。だってうさぎの耳は長いんだもの。
 それにこの話題はたぶん730回くらい繰り返してきたはずだし、とアギーは365日を2倍にかけ算して推定してみました。その倍はあったんじゃない?とメラニー。そうか、なら1460回、でも4年ならうるう年もあるし、と計算したところで、アギーはメラニーに頭の中を読まないでよ、と抗議しなければと気づきました。でもメラニーはいけしゃあしゃあとした顔で、頭の中なんか読まないわよ、というだけなのもわかっています。褐色の毛色のメラニーは南の国からやってきた少女で、あらかじめミッフィーとペンフレンドになり、ミッフィーの仲介でアギーやウインやバーバラとも手紙のやりとりをして、一家をあげて移住してきた時にはもう友だちを作ってあるという用意周到な性格でした。しかもメラニーの手元には全員の黒歴史が直筆の手紙で握られているのです。
 だからメラニーは全員のキャラクターを把握しつくしていましたし、誰が何をどう考えているか、または何も考えていないかなどは手に取るようなものでした。またメラニーはうさぎらしからぬ驚異的な記憶力をそなえており、体内電波時計とでも言うべき絶対的な時刻感覚の持ち主でした。メラニーがあの時計、1分23秒進んでいるわよ、と言えば本当に時計は1分23秒進んでいるのです。
 そして、いつもならミッフィーの提案はみんなが黙っているうちに何となくうやむやになってしまうのですが、初めて自発的な意見が他ならぬメラニーから出たので、アギーたちは椅子から転げ落ちそうになりました。
 私は反対よ、とメラニーははっきり言いました。なら偵察以外に何があるの?とムッとするミッフィーに、メラニーはきっぱり言いました。偵察なんて手温いわ、確実にダメージを与えて潰す、それしかないじゃない。みんなもそう思っているんでしょう?ここは戦場よ。
 これは魔法の言葉でした。うさぎたちは戦慄しました。