第二章。
そろそろ出ないとヤバいんじゃない、と、それまで黙ってちびちびとオレンジジュースをすすっていたウインがボソッとつぶやいたのとハローキティのお出ましがほぼ同時だったので、おしゃべりに興じていたミッフィーたちはぴたり、と黙り込みました。そうね、まだ直接対決には時期尚早ね、と内心反発を感じながらメラニーも賛同せざるを得ませんでした。メラニーはこの仲間たちの中でウインだけは御し難し、と苦手意識を持っていました。ミッフィーを筆頭に、他のうさぎたち(バーバラはくまですが)の弱みは一通り握っているメラニーですが、ウインからは弱みと呼べるようなものがつかめないのです。逆にウインの方がメラニーに対して優位に立っていると思われるのは、彼女だけがいつもメラニーよりも早く的確な状況判断を下していると見えるからでした。
一方ミッフィーは出口近いこのテーブルからはかなり遠いカウンターに、ついに現れた宿敵の姿を認めて怨恨の焔をめらめらと上げていました。それは老舗のヒロインたる自分が知名度では後発組に抜かれた嫉妬でしたが、ハローキティだって今や老舗の部類に入るのですから実情は住み分けが済んでいると言えるのです。仲良くやって行けばいいのになあ、とどちらのディヴィジョンの構成員にも敵対意識はほとんどありませんでした。しかしトップであるミッフィーちゃんとハローキティの間には晴らしがたい確執があり、それはもはやうさぎとねこのどちらが可愛いかを越えた問題でした。
その時店内に『暁の空中戦』が鳴り響きました。撃墜王がいらしたわよ、とキャシーたちがざわめきました。何なの?この店の常連が来たみたいよ、たぶんVIP待遇の。店の前にガタガタと何か移動する小屋のような乗り物が横づけするのが見えました。む、とジョースターさんはすぐにでもハーミットパープルを発動できる態勢に入りました。ヤバいスタンドの臭いがするぜ、とイギーの野生のカンが働き、テーブルの下で唸って警告を発しました。かすかべ防衛隊はばばぬきをして遊んでいましたが、しんのすけは店の入り口をちらりと見て、何か犬小屋みたいだナ、と首を傾げました。
カーペットがするすると店の床に延びてきました。ゴーグルつき飛行帽をかぶり、マフラーをしめたビーグル犬が、お伴の小鳥を連れて二足歩行で犬小屋から出てきました。撃墜王スヌーピーさまのご来店です、とミミィが告げました。